歌手で俳優の美輪明宏さんの訃報を知り、あらためて代表作「ヨイトマケ」の歌を思う。
「ヨイトマケ」という言葉を知ったのは、若い頃、原宿で働いていた時だった。
広告やイベントの仕事をしていた私は、華やかな街を歩きながら、この不思議な言葉の意味を教えられた。
ヨイトマケ。
土を突き固める人たちの掛け声だという。
その瞬間、私は「ああ、この国は、こういう名もない人たちが作ってきたんだ」と思った。
当時は、その意味を本当には理解していなかった。
企画の仕事をし、店を開き、夢を追いかけていた私は、自分もいつか成功するものだと思っていたからだ。
しかし人生は違った。
店は閉じ、仕事は減り、六十代になって私は警備員になった。
夏の炎天下に立ち、冬の冷たい風を受けながら誘導棒を振る。
華やかな仕事ではない。
誰にも気づかれないことの方が多い。
それでも、この仕事があるから道路工事は進み、人は安全に通行できる。
「ヨイトマケ」の世界は、決して昔話ではなかった。
現代にもある。
警備員もまた、社会の土台を支える仕事なのだ。
私は今、「警備員ブルース」を書いている。
それは警備会社の宣伝ではない。
現場で働く人の汗や孤独、そして誇りを記録したいからだ。
名もない仕事にも、名もない人生にも物語がある。
「ヨイトマケ」という言葉を知ったあの日から何十年も経って、ようやくその意味がわかってきた気がする。
警備員という人生の波止場から、私は今日も社会を見つめている。