警備員になった時、「人生、終わったな」と思った
正直に言う。
私は警備員になった時、「人生、終わったな」と思った。
20代の学生時代にも警備員をやった。
50代でもやった。
そして60代になって、また警備員をやっている。
若い頃は夢があった。
広告代理店で働き、フリーランスのプランナーになり、店を経営し、イベントを企画した。
だが失敗した。
年齢を重ねるにつれ、できる仕事は減り、採用される会社も減った。
そして最後に残ったのが警備員だった。
制服を着た初日。
「ここが人生の終着駅か」
そんな気持ちになったことを覚えている。
警備員にはバカと天才がいる
ところが現場に出て驚いた。
警備員には、実に変わった人が多い。
もちろん普通の人もいる。
しかし、
元社長。
元教師。
元芸術家。
元ミュージシャン。
元自衛官。
そして、どこか社会に馴染めなかった人たち。
発達特性を持つ人もいる。
世間から見れば「変わり者」の集まりだ。
だから私は思う。
警備員には、バカと天才が多い。
社会のレールを走れなかった人。
逆に、自分の世界を持ち過ぎていた人。
両方が同じ詰所で缶コーヒーを飲んでいる。
これは実に不思議な光景だ。
警備員は人生の終着駅ではない
ある日、ふと思った。
警備員は終着駅ではない。
波止場なのだ。
波止場には様々な船が集まる。
遠洋漁業から帰ってきた船。
これから出航する船。
故障して修理中の船。
積み荷を失った船。
人生も同じだ。
警備員になった人の多くは、何かを失っている。
仕事を失った。
会社を辞めた。
家庭を失った。
健康を失った。
自信を失った。
しかし、波止場とは終わりの場所ではない。
再び出航するための場所だ。
私の波止場は百貨店だった
店を閉めた後、私は百貨店の物流現場で働いた。
巨大な搬入口。
トラックが行き交う。
荷物が運ばれる。
その光景は、まるで波止場だった。
そこで私は思った。
「ここまで落ちたか」
だが同時に、
「まだ終わっていない」
とも思った。
人生には、底がある。
しかし底は、反転の起点でもある。
人生の中段突きを探せ
高校時代、私は空手部の補欠だった。
だが失恋をきっかけに、誰もいない体育館で右の中段突きだけを磨いた。
結果、県大会個人2位になった。
人生も同じだと思う。
今の私は警備員だ。
だが、警備員が本業ではない。
本業は、自分の人生そのものだ。
文章を書くことかもしれない。
人を励ますことかもしれない。
地方の歴史を伝えることかもしれない。
誰にでも、自分だけの「中段突き」がある。
それを探し、磨くことだ。
地平線は移動する
警備員という仕事は、決して華やかではない。
だが私は思う。
警備員とは人生の波止場である。
船を降りた人もいる。
これから乗る人もいる。
修理中の人もいる。
私もその一人だ。
だが波止場にいる限り、船はまだ沈んでいない。
地平線は移動する。
人生もまた、移動する。
警備員になったから人生が終わるのではない。
そこから、どこへ向かうか。
本当の物語は、そこから始まるのである。