警備員ブルース|人生の波止場から響くもの

警備員になろうと思ったら、まず読んでください。 現場で出会った人間たち。実体験者が本音で語る警備員のリアル。

警備員物語100

【警備員物語51】朝、警備に行きたくない。それでも制服を着る――60代、今日を働く意味

投稿日:

朝、目が覚める。

カーテンの向こうは、もう明るい。

時計を見る。

起きなければならない。

制服を着なければならない。

電車に乗って、現場へ行かなければならない。

わかっている。

わかっているのだが、身体が動かない。

布団の中で出てくる言葉は、一つ。

「ああ、今日は行きたくねえなあ……」

警備員になってから、こんな朝を何度経験しただろう。

昨日の疲れが残っている。

腰も重い。

遠い現場なら、なおさら嫌になる。

これから何時間も立つのかと思うだけで、うんざりする日だってある。

でも最近、私は少し考え方を変えている。

行きたくないからといって、この仕事に意味がないわけではない。

むしろ行きたくない朝に制服を着て、それでも現場へ向かう。

その一歩にも、仕事というものの意味があるのではないか。

警備員が仕事に行きたくない朝があるのは不思議ではない

警備は、外から見ると単純な仕事に見える。

「立っているだけじゃないの?」

そう思われることもある。

だが、現場に立てばわかる。

夏は暑い。

冬は寒い。

雨も降る。

風も吹く。

車、自転車、歩行者、工事車両。

周囲を見ながら、安全を確保する。

何も起きていない時間にも集中を切らさない。

しかも、毎日同じ現場とは限らない。

知らない場所へ行き、知らない人と仕事をし、その現場のやり方を覚えることもある。

だから疲れる。

「今日は行きたくない」

と思う朝があったっておかしくない。

だが、それは警備だけではないだろう。

会社員だって、職人だって、店をやっている人だって、

「今日は休みてえなあ」

という朝はある。

仕事とは、毎朝希望に燃えて出発するものではない。

行きたくない日にも行って、一日を成立させる。

それも働くということなのだと思う。

60代の警備員には「今日働ける」という価値もある

若いころの私は、こんなことを考えなかった。

仕事は選べると思っていた。

もっと面白い仕事。

もっと稼げる仕事。

もっと自分に合った仕事。

次があることを前提に考えていた。

しかし60代になると、仕事があるということの意味が変わってくる。

年齢だけで難しくなる求人もある。

応募しても返事が来ないこともある。

経験があっても、それだけでは決まらない。

そんな中で警備という仕事は、年齢を重ねた人間にも比較的門戸を開いている。

現場へ行く。

働く。

給料を得る。

生活費になる。

これは当たり前のようで、当たり前ではない。

今日、自分が働ける場所がある。

私は、この価値を以前より感じるようになった。

警備に助けられてきた部分は、確かにあるのだ。

警備員として現場に立てば、ちゃんと役割がある

そして現場へ着けば、朝の気分とは別の時間が始まる。

「おはようございます」

と挨拶する。

配置を確認する。

誘導棒を持つ。

工事が始まる。

車が来る。

歩行者が来る。

職人が動き出す。

すると不思議なもので、

「行きたくねえなあ」

と思っていた自分も、いつの間にか仕事をしている。

大型車が出るなら、周囲を見る。

老人が歩いてくれば、急かさずに待つ。

子供が来れば、いつもより注意する。

自転車が飛ばしてくれば、早めに合図する。

そこには、ちゃんと自分の役割がある。

前回までにも書いてきたが、警備の成果は派手ではない。

事故がなかった。

歩行者が無事に通った。

作業が予定どおり終わった。

そして夕方、

「本日終了です」

となる。

何も起きなかった。

それでいい。

むしろ、それがいい。

今日も一日、安全をつないだ。

そう考えれば、警備員として働いた一日は決して空白ではない。

警備員の仕事には「社会から離れない」というメリットもある

警備をしていなかったら、私はどうなっていただろう。

家にいる。

仕事がない。

人と話さない。

曜日の感覚もなくなる。

収入も減る。

考え込む時間だけが増える。

そんな可能性だってあったと思う。

警備をしていれば、とにかく外へ出る。

電車に乗る。

街を見る。

職人と話す。

警備員仲間と話す。

通行人と接する。

知らない場所へ行く。

腹が立つこともある。

笑うこともある。

面白い人間にも出会う。

社会との接点が切れない。

これは、警備を続けてわかった大きなメリットの一つである。

しかも私の場合、その現場で見た人間や出来事が、こうして文章の材料にもなっている。

人生とはわからない。

嫌だ嫌だと思っていた仕事から、文章が生まれている。

朝つらいときは「人生」ではなく「今日」だけ考える

朝から人生全部を考えると重くなる。

「俺はいつまで警備をするんだ」

「この先どうなるんだ」

「65歳から何ができる」

「金は大丈夫なのか」

そんなことを布団の中で全部考え始めたら、そりゃ起きられなくなる。

だから、行きたくない朝は範囲を小さくする。

まず起きる。

顔を洗う。

制服を着る。

靴を履く。

家を出る。

駅まで行く。

現場へ着く。

そこまででいい。

人生を今日一日で解決しなくていい。

今日は今日の仕事をする。

未来のことは、帰ってから少しだけ考える。

それくらいでいい。

「辞めたい」と「今日の仕事をきちんとやる」は両立する

第50話で、私は書いた。

俺は警備員を辞める。

その気持ちは変わっていない。

ただし、ここは大事だ。

辞めたいからといって、今やっている警備を粗末にしていいわけではない。

むしろ逆だと思う。

次へ行きたい。

だからこそ、今の仕事もきちんと終える。

今日の給料が、次の挑戦を支える。

今日の現場経験が、次の記事になる。

今日会った人間が、自分の視野を広げるかもしれない。

警備を続けながら求人を見る。

文章を書く。

AIを使う。

昔学んだマーケティングをもう一度掘り起こす。

次の仕事を探す。

つまり今の警備は、

「抜け出すまで仕方なくやる仕事」だけではない。

次へ進むための生活と時間を支えてくれている仕事でもある。

だったら、利用させてもらえばいい。

そして働く以上は、自分の持ち場を守る。

それでいい。

警備員の経験は、あとから「資産」に変えられる

私はこの文章を書きながら思う。

警備をやらなければ、知らなかったことが山ほどある。

道路工事の仕組み。

建築現場の人間関係。

職人たちの世界。

片側交互通行。

イベントの裏側。

施設警備。

夏の道路の暑さ。

冬の誘導棒の冷たさ。

通行人の優しさ。

理不尽な言葉。

警備員同士の妙な人間模様。

そして、

人生の途中で警備員になった人間たちの物語。

全部、自分の中に残った。

私は、それを文章にしている。

だったら警備員として過ごした時間は、消耗だけではなかったことになる。

経験は、そのままではただの過去だ。

しかし整理して、考えて、言葉にすれば、

経験は資産になる。

そう思って私は書いている。

警備員を辞めたい朝こそ、自分にこう言ってみる

「一生やれ」

とは言わない。

私自身、そう思っていない。

もっと自分に合う仕事があるなら探せばいい。

身体がきついなら、負担の少ない現場を探してもいい。

交通誘導が合わなければ、施設警備やイベント警備を検討してもいい。

警備以外へ転職したっていい。

ただ、朝つらいからといって、

自分が今までやってきた仕事まで否定する必要はない。

雨の日も立った。

暑い日も立った。

寒い朝も立った。

事故を起こさず一日終えた。

給料を稼いだ。

自分の生活を自分で支えた。

それは事実だ。

だから私は、行きたくない朝にこう言ってみようと思う。

「わかった。行きたくないよな。でも今日は行こうぜ」

一生じゃない。

今日だけだ。

60代、今日も制服を着る。それで十分じゃないか

若いころ思い描いていた人生とは、ずいぶん違うところまで来た。

まさか60代で警備員をしているとは思わなかった。

それでも朝になれば制服を着る。

現場へ行く。

自分の持ち場に立つ。

人を通す。

車を誘導する。

一日を無事に終える。

そして帰ったら、次の人生のために一行でも書く。

それでいいではないか。

今日の仕事をすることと、明日を諦めないことは両立する。

警備員を続けることもできる。

違う警備へ移ることもできる。

別の仕事へ行くこともできる。

私のように、警備をしながら別の仕事をつくろうとしたっていい。

選択肢は一つではない。

だから朝から、自分の人生に判決を下すのはやめよう。

「ああ、行きたくねえなあ」

そう言いながら起きればいい。

制服を着ればいい。

そして今日の持ち場へ行く。

そこで一日働いて帰ってくる。

それだけでも、今日の自分はちゃんと前へ進んでいる。

警備員だからではない。

働く人間として。

そして、まだ次を諦めていない人間として。

よし。今日も行ってくるか。

それくらいでいい。

それくらいが、いい。


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広告プランナー、フリーランス、店舗経営を経て、事業に失敗。
その後、地方ホテル支配人、配送、飲食、施設警備、交通誘導など、さまざまな現場仕事を経験してきました。

現在は交通誘導警備の現場に立ちながら、仕事の厳しさ、人間模様、収入、失敗談、そして現場で見つけた小さな希望を「警備員ブルース」に記録しています。

人生は、思いどおりにいかなくなってからも続きます。

失業した人、仕事に行くのがつらい人、60代からの働き方に迷っている人へ。成功者の上から目線ではなく、いまも現場で働く一人として、警備員という仕事の現実と、人生をもう一度立て直すためのヒントを届けます。

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現場仕事を「人生の再起の入口」に変える、再起プランナーとして発信しています。

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