警備員ブルース|人生の波止場から響くもの

警備員になろうかな、と思ったらまず読んでください。 実体験者が現場で出会った人間たちを、本音で語る警備員の実情。

警備員物語100

【警備員ブルース 70】警備員と「救い」を売りに来る人たち──人生を変えたい人ほど気をつけたい甘~い言葉

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警備員をやっていると、想像もつかないような人間に出会う。

昨日まで何をしていたのか。

なぜ警備員になったのか。

これから何をしようとしているのか。

それぞれ事情はみんな違う。が、根底は同じ。

元会社員。

元経営者。

元職人。

元ドライバー。

商売に失敗した人。

定年後の人。

次の仕事が見つからなかった人。

そして、なかには妙な話を持ってくる人もいる。

「もっと稼げますよ」

「人生を変えませんか」

「あなたには、まだ可能性があります」

「本当の自分を知りたくありませんか」

俺は思う。

そんなあなたは、なんで今、警備員やってるの?

そんなすごいこと知ってるなら、警備員なんかやらないよ。

まあ、そう言ってしまえば身も蓋もない。

だが、こういう言葉は、案外、人の心に入ってくる。

なぜなら警備員の中には、

「このままでいいのか」

と思いながら働いている人間が、少なからずいるからだ。

俺も、その一人だった。

警備員に近づく「稼げる・人生が変わる」という甘い話

もちろん、警備員だから勧誘されるという話ではない。

こういう話は、どこにでもある。

投資。

副業。

起業塾。

自己啓発。

高額セミナー。

会員制コミュニティ。

そして宗教。

中身はまったく違う。

真っ当なサービスもあるし、実際に役立つものだってある。

全部を一緒くたにして怪しいと言うつもりはない。

ただ、ある種の勧誘には共通する入口がある。

それは、

「今のあなたではない人生」

を見せることだ。

もっと稼げるあなた。

もっと自信のあるあなた。

成功しているあなた。

悩みから解放されたあなた。

本当の自分を知ったあなた。

新しい仲間に囲まれたあなた。

それを目の前にぶら下げられる。

今の生活に満足している人なら、

「いや、結構です」

で終わる。

ところが、

「ここから抜け出したい」

と思っている人間には、その言葉が妙に光って見える。

警備員仲間から誘われた、ある音楽ライブ

俺にも経験がある。

あるとき、警備員仲間の女性から音楽ライブのようなイベントに誘われた。

普通に参加した。

イベントが終わった。

すると渡された紙にアンケートを書くことになった。

今の自分に自信がありますか?
悩みはありますか?
今の生活に満足してますか?

そんな質問が難渋も続いた。

満足?してるわけないだろう!

不満?

不満なら、あるよ!そりゃある。

警備員だって、普通の人間だ。

俺は警備員の仕事についての不満も書いた。

暑い。寒い。仕事が不安定。現場が遠い。このまま歳を取っていいのか。

不満だけは、書こうと思えば、いくらでも書ける。

すると、その回答が分析されて、グラフのようなものになって戻ってきた。

悩みを書いたら「あなたにはアドバイスが必要です」と言われた

「アドバイスが受けられます」

そんな流れになって、俺は別室へ通された。

そこにスーツ姿の男性がいた。

いろいろ質問された。

そしてグラフを見ながら、俺について説明してくれた。

なるほど。

そうなのか。

聞いていると、それなりに思い当たるところがある。

占い師に話を聞いているような、不思議な感じだった。

もちろん、その時点では、

「危ないところに来てしまった」

なんて思っていない。

むしろ、

面白い。

と思った。

人生について考える。

自分について考える。

他人と話す。

今まで気づかなかったことに気づく。

そういうものは、普通に面白いのだ。

だから、もう少しやってみようと思った。

5000円から始まり、気づけば20万円ほど払っていた

最初は、それほど高くなかった。

教材になる本を買った。

授業料も前払いした。

5000円ほどだったと思う。

毎週末、4時間くらい通った。

ノートに書く。

話し合う。

課題をやる。

人とコミュニケーションを取る。

自分自身について考える。

これが意外に面白かった。

発見もあった。

「これは役に立つかもしれない」

そう思った。

3週間。

4週間。

週に一度通っているうちに、

次の段階を勧められた。

もう少し深いコース。

さらに特別な内容。

そこまで来ると、こちらも面白さを感じている。

結局、

20万円ほど払った。

そして一か月ほど通った。

自己啓発だと思っていたら、途中から宗教だと分かってきた

内容そのものには、面白いところもあった。

全部が全部くだらなかったとは思わない。

人との話し方。

物事の捉え方。

自分について考えること。

役に立った部分もある。

だからこそ難しい。

最初から、

「これは全部インチキだ」

と思えるものなら簡単なのだ。

行かなければいい。

金を払わなければいい。

だが、

一部が面白い。

一部が役に立つ。

だから次へ行ってしまう。

そして、しばらくして俺は考え始めた。

待てよ。

これ、どこまで続くんだ?

次がある。

その次もある。

さらに上がある。

最終段階まで行ったら、

いったいいくらかかるんだ?

しかも途中から、単なる自己啓発ではなく、宗教的な組織なのだということも見えてきた。

俺は行くのをやめた。

やめた途端、電話・メール・LINEが来る

すると、

電話。

メール。

LINE。

また電話。

また連絡。

「その後どうですか」

「次はいつ来られますか」

「続けませんか」

そんな連絡が来る。

最初は返事もした。

そのうち、

面倒になった。

そして俺は思った。

なんか、ウザいな。

人生は変わったか。

確かに変わった。

少なくとも、

連絡がウザいと思う人生にはなった。

なんだそりゃ。

なぜ「人生を変えたい人」は勧誘の言葉に弱いのか

ここからが、この話でいちばん書きたいことだ。

俺は警備員を「弱者」と決めつけたいわけではない。

警備員にも金を持っている人はいる。

定年後、健康のために働いている人もいる。

警備が好きな人もいる。

資格を取り、プロとして働いている人もいる。

ただ、

人生を変えたいと思いながら警備員をしている人間もいる。

これは事実だと思う。

仕事が見つからなかった。

商売に失敗した。

会社を辞めた。

金がない。

将来が不安だ。

自信をなくした。

「俺の人生、このままで終わるのか」

そんなことを考えながら、誘導棒を振っている人間もいるだろう。

そういうときに、

「あなたには可能性があります」

と言われる。

嬉しいよ。

そりゃ。

「もっと稼げます」

嬉しい。

「人生が変わります」

変えたいよ。

だから響く。

投資・副業・起業塾・宗教──「救い」が商品になるとき

人間は、苦しいと救いを探す。

これは別に悪いことじゃない。

誰だってそうだ。

本を読む。

人に相談する。

転職する。

勉強する。

宗教に救われる人だっている。

問題は、

こちらの不安と、向こう側の商売が結びついたときだ。

「あなたは今のままではダメです」

そして、

「でも、こちらへ来れば変われます」

この二つがセットになったら、俺は一度立ち止まったほうがいいと思う。

そして聞く。

いくらかかる?

いつまで続く?

次のコースはいくら?

やめたくなったら簡単にやめられる?

成果が出なかった場合は?

なぜ今、契約しなければならない?

希望を語っているように見えて、恐怖を売っていないか。

ここは大事だ。

「一気に人生逆転」は、警備員にとって魅力的すぎる

稼げる。

変われる。

成功できる。

自由になれる。

人生逆転。

こういう言葉は魅力的だ。

特に、

毎日道路に立っていると。

真夏に汗を流して、

真冬に震えて、

赤い棒を振って、

「俺、何やってるんだろう」

と思った夜には、

ものすごく魅力的に見える。

俺にも分かる。

だから、

「そんなものに引っかかる奴は馬鹿だ」

とは言えない。

俺だって金を払った。

面白いと思った。

次へ行った。

人間とは、そういうものなのだと思う。

警備員が人生を変えるなら「救いを買う」前にやれることがある

では、どうするか。

立っているだけ。

棒を振っているだけ。

それだけでは、確かに人生はなかなか変わらない。

だったら、

警備をやりながら変えればいい。

求人を見る。

履歴書を書く。

あるいは、業界で上に行くなら資格を取る。

昔の経験を棚卸しする。

本を読む。

文章を書く。

人に会う。

小さく商売を試してみる。

何か一つ始める。

俺の場合なら、

こうして「警備員ブルース」を書くことも、その一つだ。

一発逆転じゃない。で、どうなるかまだわからない。

地味だ。

ものすごく地味だ。

今日やっても、明日何かが変わるわけじゃない。

でも、自分で歩いている。

そこが違う。

警備員へ──美味しそうな「救い」の話には気をつけよう

現場が終わる。

制服を脱ぐ。

誘導棒をバッグに入れる。

今日も一日が終わる。

明日もまた警備か。

そう思う。

そんな夜、

誰かがやって来るかもしれない。

  • 「もっと稼げますよ」
  • 「あなたなら成功できます」
  • 「人生を変えませんか」

魅力的だ。

ちょっと聞いてみたくなる。

聞くのはいい。

勉強するのもいい。

宗教だって、本人が納得して信じるなら、その人の自由だ。

ただし、

財布を開く前に、一度だけ考えよう。

その人は、

俺を助けようとしているのか。

俺に何かを売ろうとしているのか。

それとも、

その両方なのか。

救いそのものが悪いわけじゃない。

希望だって必要だ。

でも、

  • 「すぐ稼げる」
  • 「一気に変われる」
  • 「これで人生が逆転する」

そんな美味しそうな救いほど、

少し離れたところから眺めてみる。

警備員は毎日、

道路で人や車を止めている。

だったら、

自分の人生でも、ときどき誘導棒を上げればいい。

「ちょっと待て」と。

止めるべきものを止める。

確認してから通す。

なんだ!考えてみれば、

それも警備員の仕事じゃないか。

あなたの周りにもう一人の警備員を!

人生の「迷いと甘い話」から交通整理する誘導員を!

-警備員物語100

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再起プランナー。現在、現役警備員として働きながら、自らの再起を模索中!

元広告代理店勤め、フリーランスプランナーへ。店舗経営(DJバー)を経て、事業に失敗。

その後、地方ホテル支配人、配送、飲食、施設警備、交通誘導など、さまざまな現場仕事を経験する。

現在は交通誘導警備の現場に立ちながら、仕事の厳しさ、人間模様、収入、失敗談、そして現場で見つけた小さな希望を「警備員ブルース」に記録しています。

人生は、思いどおりにいかなくなってからも、続く。

失業した人、仕事に行くのがつらい人、60代からの働き方に迷っている人へ。成功者の上から目線では全くなく、現場で働く一人として、警備員という仕事の現実と、人生をもう一度立て直すためのヒントを届けます。

失敗しても、人生はそこで終わらない。
現場仕事を「人生の再起の入口」に変える、再起プランナーとして発信しています。

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