警備員ブルース|人生の波止場から響くもの

警備員になろうと思ったら、まず読んでください。 現場で出会った人間たち。実体験者が本音で語る警備員のリアル。

警備員の100日物語

【警備員物語28】ミスター運気――警備員は今日も運を配っている?

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警備会社へ入って思ったことがある。

「この人、本当に警備員なのか?」

そんな人が実に多い。

元料理人。

元大工。

元カメラマン。

元ミュージシャン。

元広告マン。

ちなみに私は、その元広告マンである。

本当なら、それぞれ本業で食べていたかった人たちだ。

警備は副業のつもりだった。

あるいは、次の仕事が見つかるまでの「つなぎ」のつもりだった。

ところが、人生というのは思いどおりにはいかない。

気がつけば何年も誘導棒を握っている。

私もその一人だ。

そんな警備員の中に、ちょっと不思議な男がいる。

私は勝手に**「ミスター運気」**と呼んでいる。

……間違っても「ウンコ」と読まないでいただきたい。

本業は占い師?

彼は、休日になると占い師になる。

タロットカード。

ルーンストーン。

オラクルカード。

私には違いがよく分からない。

それでも本人は実に真剣だ。

百貨店の催事場や特設会場へ呼ばれ、お客さんを鑑定しているらしい。

「結構当たるんですよ。」

本人は照れくさそうに笑う。

「本当に?」

私は半信半疑で聞く。

しかし、彼の話を聞いていると、不思議と嘘を言っているようには思えない。

警備服を着て交通誘導をしている人が、休日にはカードを広げ、人の人生相談に乗っている。

そんな人が、本当にいるのである。

神社に詳しい

ミスター運気は、神社にも詳しい。

現場が終わると、

「この近くにいい神社がありますよ。」

と教えてくれる。

私は神社が好きだ。

時間があれば、ふらっと立ち寄る。

お賽銭は、あまり豪快には入れられない。

財布の中を見て、

十円。

五円。

一円。

そんな小銭を組み合わせて、

「よろしくお願いします。」

と頭を下げる。

神様も、

「もう少し奮発しろ。」

と思っているかもしれない。

だが、気持ちだけは本物である。

警備だから出会える場所

ミスター運気に教えてもらって、田無神社へも行った。

現場が近くだったので、その帰りに立ち寄った。

静かだった。

空気が違った。

「ああ、こういう時間も悪くないな。」

と思った。

靖国神社もそうだ。

都内の現場へ行くと、時間があれば参拝する。

警備という仕事は、毎日違う街へ行く。

普通なら一生行かないような場所へ派遣されることもある。

住宅街。

高級住宅地。

商店街。

工場。

大学。

そして神社仏閣。

考えてみれば、これは警備という仕事の面白さでもある。

旅行ではない。

仕事なのだ。

それでも、その土地の空気を少しだけ味わえる。

現場が終わった帰り道、神社へ立ち寄る。

そんな贅沢もある。

運とは何だろう

ミスター運気は、運を信じている。

私はどうだろう。

信じているような、信じていないような。

広告の仕事をしていた頃は、

「努力がすべて。」

そう思っていた。

企画を考える。

コピーを書く。

プレゼンをする。

努力した者が勝つ。

そんな世界だった。

ところが人生は、努力だけでは説明できないことも多い。

店を開いた。

閉めた。

転職した。

離婚した。

警備員になった。

思い返すと、運もあったような気がする。

悪運も。

強運も。

その両方があった。

だから最近は、

「運というものも、少しはあるのかな。」

と思うようになった。

不思議と落ち着く男

ミスター運気と話していると、不思議と気持ちが落ち着く。

大げさなことは言わない。

押しつけもしない。

「こうするといいですよ。」

そんなふうに、静かに話す。

その空気が心地いい。

占いが当たるかどうかは分からない。

神様が願いを叶えてくれるかどうかも分からない。

でも、人は「少し希望がある」と思えるだけで、前を向けることがある。

もしかすると、占いとは未来を当てることではなく、人の背中を少し押す仕事なのかもしれない。

滝に打たれた男

そういえば、思い出した。

私も三十代の頃、滝に打たれに行ったことがある。

何を考えていたのか。

人生を変えたかったのか。

修行したかったのか。

今となっては、自分でもよく分からない。

冷たかったことだけは、はっきり覚えている。

あの話は、また別の機会に書こうと思う。

警備員になるような人間は、どこか人生をやり直したいと思っている人が多い。

私も、その一人だったのかもしれない。

運気よ、来い!

ミスター運気に会うと、私は少しだけ前向きになる。

帰り道、神社へ寄ってみようか。

今日は空を見上げてみようか。

そんな気持ちになる。

人生は思いどおりにはいかない。

だから面白い。

警備員という仕事も、思っていた人生ではなかった。

それでも、この仕事を始めたから出会えた人がいる。

ミスター運気も、その一人である。

さて、今日も現場が終わった。

運気よ、来い。

たんまり来い。

できれば健康も。

できれば仕事も。

そして、欲を言えば……

できれば、お金も。

-警備員の100日物語

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広告系プランナー、フリープランナーを経て店舗経営に挑戦するも失敗。
その後、地方ホテル支配人、配送ドライバー、飲食、施設警備、交通誘導など、さまざまな現場仕事を経験。
現在は警備の現場に立ちながら、警備員や現場仕事を人生の再起の入口として発信しています。
成功談だけではなく、落ちた側・働く側のリアルを知る者として、
再起を応援する「再起プランナー」として発信中。

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