警備員ブルース|人生の波止場から響くもの

警備員になろうと思ったら、まず読んでください。 現場で出会った人間たち。実体験者が本音で語る警備員のリアル。

警備員の100日物語

【警備員物語33】警備員は、毎日旅をしている|現場が変わる仕事だから人生の経験値が増える

投稿日:

警備という仕事は、経験という財産を運んでくる

「警備員なんて立っているだけ。」

そう思われることが多い。

私も警備員になるまでは、そう思っていた。

ところが、何年も現場へ通ってみると、まるで違うことに気づく。

警備員は、毎日旅をしている。

もちろん旅行ではない。

仕事である。

朝早く起き、知らない駅で降りる。

住宅街を歩き、工事現場へ向かう。

昼になれば近所の定食屋を見つける。

帰り道には神社がある。

商店街がある。

昔ながらの喫茶店がある。

その町の空気を吸う。

私は広告の仕事をしていた頃、企画とは「経験を編集すること」だと教えられた。

今思えば、警備員ほど経験を集められる仕事はない。

同じ現場は、ほとんどない

会社員なら毎日同じ会社へ行く。

ところが警備員は違う。

今日は世田谷。

明日は立川。

来週は豊洲。

その次は国分寺。

現場が変われば、街が変わる。

街が変われば、人も変わる。

監督も違う。

職人も違う。

歩行者も違う。

だから飽きない。

いや、疲れる。

でも経験は確実に増える。

神社があれば寄ってしまう、そんな私は、早続けて5年以上。

私は神社が好きだ。

現場の近くに神社があれば、帰りに寄る。

田無神社。

靖国神社。

名前も知らない町の小さな神社。

警備をしていなければ、一生行かなかった場所ばかりだ。

十円玉。

五円玉。

財布の中の小銭を入れて頭を下げる。

それだけでも心が少し落ち着く。

これも警備員という仕事がくれた旅である。

そんなことをしているうちに、移動を楽しむようになり5年はあっという間である。

経験は無料でもらえる

警備の給料は一時的には稼ぎやすいが、決して高いとはいえない。

しかし、一つだけ大きな財産がある。

それを一言でいうと「経験」である。

町を知る。

人を知る。

店を知る。

歴史を知る。

そして話のネタが増える。

「この間、○○へ行ったんですが……。」

そんな会話が自然にできるようになる。

人間は経験の数だけ、言葉が増える。

言葉が増える人は、人との出会いも増える。

それは、私が広告の仕事で学んだことでもある。

この現場の経験は、きっと次につながる、そして未来へ

警備員は、一生やる仕事じゃないな。

よく、そんな話を仲間とする。

私も、そう思って始めた。

しかし、この仕事で見た町。

出会った人。

聞いた話。

歩いた道。

それらは全部、自分の財産になる。

私は今、『警備員ブルース』を書いている。

これも警備員にならなければ、一行も書けなかった。

人生は無駄にならない。

遠回りも、寄り道も、漂流も、あとで全部つながる。

だから私は、今日も知らない駅へ降り立つ。

それは現場へ向かう一日であり、

人生という長い旅の、一ページでもあるのだから。

-警備員の100日物語

執筆者:

関連記事

【警備員物語30】自営の店の閉店後、私は転がり落ち、漂流者になった

警備員になって数か月。 ここまで書いてきて、ふと思った。 少し、自分のことを書いておこう。 なぜ私は、工事現場で誘導棒を振っているのか。 なぜ六十歳を前にして、ヘルメットをかぶる人生になったのか。 そ …

【警備員物語21】無口のダッグ――「マッチ&アリー」の証明。警備はしゃべるだけの仕事ではない。

警備員という仕事は、声が大きい人が向いている。 私は最初、そう思っていた。 「こちらをお通りください。」 「少々お待ちください。」 「お気をつけください。」 歩行者や車を誘導するのだから、よくしゃべる …

【警備員物語12】ラジオ平さん番外編 ― その現場は、いつしか彼のシマになっていた

ラジオ平さんが常駐しているという工事現場へ行った。 派遣の連絡では、警備員は二名とだけ聞いていた。 現場に着いて、もう一人がラジオ平さんだと分かった。 以前、一緒に働いたときの彼は、とにかくよくしゃべ …

警備員の仕事は意外と面白い|イベント・観光地・展示会で働く魅力とは

「警備員の仕事」と聞くと、ただ立っているだけ、地味、きつい——そんなイメージを持つ人も多いかもしれません。 けれど実際にやってみると、警備の仕事は思っているよりずっと変化があり、現場ごとに空気が違う仕 …

【警備員物語31】そして、流れ流れて、警備員へ。そして今も。

人生は一本道ではない。 まっすぐ歩いているつもりでも、気がつけば違う岸へ流されている。 私は、それを何度も経験してきた。 店を閉めたあと、広告の世界へ戻ろうとした。 しかし時代は変わっていた。 企画も …

広告系プランナー、フリープランナーを経て店舗経営に挑戦するも失敗。
その後、地方ホテル支配人、配送ドライバー、飲食、施設警備、交通誘導など、さまざまな現場仕事を経験。
現在は警備の現場に立ちながら、警備員や現場仕事を人生の再起の入口として発信しています。
成功談だけではなく、落ちた側・働く側のリアルを知る者として、
再起を応援する「再起プランナー」として発信中。

カテゴリー

カテゴリー

人気記事