警備員ブルース|人生の波止場から響くもの

警備員になろうかな、と思ったらまず読んでください。 実体験者が現場で出会った人間たちを、本音で語る警備員の実情。

警備員物語100

【警備員物語79】64歳、マンション管理員の面接に落ちた。「管理人はサービス業なんですけど」

投稿日:

落ちた。

マンション管理員の面接に、落ちた。

64歳。

警備員歴、六年目。

そろそろ交通誘導の現場から抜けて、一つの場所で長く働ける仕事へ移りたいと思って応募した。

書類を作った。

面接の練習もした。

久しぶりにスーツを着た。

少し早めに家を出た。

そして面接を受けた。

結果は、不採用。

メールには丁寧な言葉が並んでいた。

厳正、慎重に検討した結果、ご希望には応えられない――。

不採用通知というものは、文章だけ読むと実に礼儀正しい。

しかし要するに、

「あなたは要りません」

ということである。

64歳にもなると、これくらいの翻訳能力は身についている。

それでも、落ちればへこむ。

私はそのメールを見ながら、面接で女性担当者から言われた一言を思い出していた。

「管理人はサービス業なんですけど」

なんですけど。

あの「けど」が、妙に残った。

64歳の転職。警備員からマンション管理員を目指した

私は59歳で警備員になった。

それから六年近く、交通誘導を中心に働いてきた。

夏は暑い。

冬は寒い。

現場は変わる。

遠い現場もある。

前日に勤務指示が変わることもある。

つい先日も、午後1時開始と聞いて喜んでいたら、電話が来て午前8時半に変更され、さらにもう一度電話が来て、別のイベント警備になった。

私は電話を切って、

「あー、もう辞めたい」

と思った。

だから転職を考えた。

マンション管理員なら、一つの物件に腰を据えて働ける。

受付。

巡回。

清掃。

居住者への対応。

もちろん楽な仕事だとは思っていない。

しかし、毎日のように違う道路へ行き、誘導棒を振る現在の仕事とは違う働き方ができる。

65歳を目前にした私には、そこが魅力だった。

もう一度、長く働ける場所を持ちたかった。

マンション管理員の面接にスーツで向かった

面接の日。

私はスーツを着た。

警備員の制服ではない。

ヘルメットもない。

誘導棒もない。

鏡を見る。

一応、会社員のように見える。

昔は広告や販促の仕事をしていた。

営業もした。

企画もした。

人前で話すことだって、それほど苦手ではなかった。

それなのに64歳になって転職面接へ向かうと、妙に緊張する。

年齢という数字が、自分より先に面接室へ入って椅子に座っているような気がするのである。

64歳。

本人より態度がでかい。

私はそいつを連れて、面接へ行った。

60代の転職面接で聞かれたこと

面接官は二人だった。

私はこれまでの仕事について話した。

広告。

企画。

店舗経営。

ホテル。

そして警備。

なぜマンション管理員を希望するのかも話した。

私は、

「今度は一つの場所で、できるだけ長く働きたい」

という趣旨のことを伝えた。

これは面接用に作った言葉ではなかった。

本当にそう思っていた。

警備の現場は毎日変わることがある。

昨日まで知らなかった場所へ行く。

知らない隊員と組む。

知らない監督から指示を受ける。

それを六年近くやった。

そろそろ、

「明日はどこだ?」

ではなく、

「明日もここだ」

という仕事がしたかった。

PCテストで苦戦した。64歳の転職で感じた壁

面接だけではなかった。

パソコンのテストもあった。

これには苦戦した。

パソコンそのものをまったく使えないわけではない。

私はブログだって書いている。

しかし、用意されたノートパソコンを使って、その場で課題をこなすとなると勝手が違った。

指が思ったように動かない。

「あれ?」

となる。

普段ならできることまで怪しくなる。

隣に面接官がいると思えば、さらに怪しくなる。

人間というのは見られているだけで、なぜあれほど急に機械に弱くなるのだろう。

そのあと適性検査もあった。

私は受けた。

終わった。

そして面接に戻った。

マンション管理員は受付・巡回・清掃だけではない

勤務予定のマンションについても説明を受けた。

高層のマンションだった。

受付がある。

巡回がある。

日常的な管理業務もある。

私は施設警備を経験している。

中野ブロードウェイでも働いたことがある。

巡回にも馴染みがある。

だから、そこは多少経験が生かせると思っていた。

しかし今振り返ると、私は一つ、大きな勘違いをしていたのかもしれない。

私はマンション管理員を、

「警備員に比較的近い仕事」

として見すぎていた。

実際には、もっと住民側を向いている仕事なのだろう。

面接で「マンションに変な人はいませんか?」と聞いてしまった

面接の最後には、

「何か質問はありますか」

という時間がある。

ここで私は質問した。

過去に施設警備を経験していたこともあり、居住者や利用者とのトラブルが少し気になっていた。

そして、

「マンションに変な人はいませんか?」

というようなことを訊いてしまった。

今考えれば、

これはよくなかった。

「変な人」という表現もよくない。

それ以上に、管理員としてこれから居住者に接する人間が、入社する前から、

「面倒な住民はいないでしょうね」

と確認しているように聞こえた可能性がある。

私の頭にあったのは、施設警備時代の経験だった。

警備員は、どうしても「問題が起きたらどうする」という発想になりやすい。

危険はないか。

不審者はいないか。

トラブルはないか。

警備という仕事では、それ自体がおかしな考えではない。

だがマンション管理員は違う。

相手はまず、

「警戒すべき人」ではなく「お客様であり居住者」

なのである。

そこで女性の採用担当者が言った。

「管理人はサービス業なんですけど」

「管理人はサービス業なんですけど」が胸に引っかかった

その場では、

「ああ、そうですね」

くらいに受け取ったと思う。

しかし面接が終わってからも、その言葉が残った。

管理人はサービス業なんですけど。

そして不採用通知が来てから、もっと残った。

あれは単なる説明だったのか。

それとも、

「あなたは、この仕事を分かっていますか」

という意味だったのか。

今となっては分からない。

採用担当者にしか分からない。

不採用の理由も知らされていない。

PCテストかもしれない。

年齢かもしれない。

ほかにもっと条件の合う応募者がいたのかもしれない。

面接全体の印象かもしれない。

だから、

あの一言が原因で落ちた、と決めつけることはできない。

ただし。

私自身の中には、引っかかった。

なぜなら、彼女の言っていることには一理あったからだ。

警備員とマンション管理員の違いは「人を見る方向」なのかもしれない

警備員もサービス業的な仕事ではある。

通行人に声をかける。

頭を下げる。

案内する。

安全を守る。

しかし仕事の根っこには、

警戒

がある。

事故は起きないか。

車は来ないか。

人が飛び出さないか。

不審なことはないか。

だから私は、人を見るときにも知らず知らず、

「問題はないか」

という目で見ていたのかもしれない。

一方、マンション管理員なら、

「この人に何ができるか」

「気持ちよく暮らしてもらうにはどうするか」

という方向から人を見る必要がある。

同じ制服仕事でも、立っている場所が違う。

私は面接で、それを十分切り替えられていなかったのかもしれない。

それでも私は「サービス業」を知らない人間ではない

ただ、一つだけ言いたいこともある。

私はずっと警備員だったわけではない。

広告関係の仕事をした。

営業もした。

店も経営した。

DJとライブの店だった。

カウンターにも立った。

酒も作った。

客と話した。

客が来なければ困った。

客が帰れば、

「また来てもらえるだろうか」

と考えた。

ホテルの仕事もした。

だから、

サービス業というものを、まったく知らないわけではない。

むしろ人生のかなりの部分で、人を相手に仕事をしてきた。

それなのに面接では、その経験をうまく一本につなげられなかった。

「警備員から管理員へ」

ということばかり考えていた。

本当なら、

広告、営業、店、ホテル、警備。

全部、

「人と接する仕事をしてきた」

という一本の線で話せたはずだった。

これは、面接が終わってから気づいた。

遅い。

面接というものは、終わってから急に頭が良くなる。

64歳で転職に失敗すると「もう無理か」と思う

不採用通知を見たとき、

やはり落ち込んだ。

若いころなら、

「次だ」

と思えたかもしれない。

64歳になると、

一社落ちるたびに、

「年齢的に、もう無理なんじゃないか」

という声が聞こえてくる。

誰かが言っているわけではない。

自分で言っている。

これが厄介である。

求人票を見る。

年齢不問。

未経験可。

シニア活躍中。

そう書いてある。

しかし応募する側の私は64歳である。

あと少しで65歳。

「本当に私も入っていますか」

と訊きたくなる。

だが、訊いても仕方がない。

応募するしかない。

60代の転職は、不採用から何を拾うか

今回の面接で、私は少なくとも三つ拾った。

一つ。

マンション管理員は「警備の延長」とだけ考えない。

二つ。

自分の経歴をバラバラに説明しない。

広告、営業、店舗経営、ホテル、警備。

全部を「人に対応してきた経験」としてつなげる。

そして三つ。

面接の最後の質問は、

自分の不安を解消するためだけに使わない。

「変な人はいませんか」

ではなく、

「居住者対応で特に大切にされていることは何でしょうか」

と訊けばよかった。

同じことが気になっていても、質問の向きが違う。

前者は、

「私は困りたくない」

である。

後者は、

「私はどう役に立てますか」

である。

なるほど。

サービス業だ。

不採用になってから分かった。

授業料としては少々高い。

警備員を辞めたい。でも転職は一発では決まらない

前回、私は書いた。

警備員を辞めたい。それでも今日も制服を着る。

今回の面接が受かっていたら、話は簡単だった。

警備員を辞める。

新しい仕事へ行く。

警備員ブルース、新章突入。

実に美しい。

しかし人生は、ブログの構成案どおりには進まない。

落ちた。

だから次の警備現場へ行く。

また制服を着る。

また誘導棒を持つ。

たぶん私は、

「あー、辞めたい」

と言う。

それでも働く。

そして、その横で次を探す。

これが現実なのだと思う。

警備員からの転職は、会社員だけが道ではない

今回落ちて、もう一つ考え始めた。

転職というと、

別の会社に雇ってもらうこと

ばかり考えていた。

しかし、本当にそれだけなのだろうか。

私は以前、自分で店をやった。

失敗した。

便利屋のような仕事をしたこともある。

短期間ではあったが、自分で仕事をして金を得た経験もある。

もう大きな店を構えようとは思わない。

家賃を背負う。

設備投資をする。

借金をする。

客が来る前から固定費が出ていく。

あのやり方は、もう怖い。

しかし、

小さく仕事を取る。

一人でできる。

固定費を極力持たない。

警備員を続けながら試す。

そんな働き方ならどうだろう。

64歳の転職には、「再就職」だけでなく「小さな自営」という道もあるのではないか。

不採用通知を見ながら、そんなことまで考え始めた。

転んだついでに、地面に落ちているものを拾う。

私は昔から、そういう人生である。

「管理人はサービス業なんですけど」

あの言葉を、私はしばらく忘れないと思う。

最初は少し引っかかった。

落ちたあとには、なおさら引っかかった。

しかし時間が経つと、別の意味にも聞こえてきた。

「あなたは、本当は何ができる人なんですか」

そう訊かれたような気がする。

警備員です。

それだけではない。

元広告マン。

プランナー。

営業。

元店主。

ホテル勤務。

いろんな仕事をしてきた。

失敗もした。

64歳まで来た。

そして今、道路に立っている。

自分でも、いったい何屋なのか分からない。

だったら、これから探せばいい。

64歳でマンション管理員の面接に落ちた。

悔しい。

格好悪い。

できれば受かりたかった。

しかし、ここで終わるつもりもない。

明日もたぶん警備員の制服を着る。

その制服を脱ぐ日まで、

次を探す。

雇ってもらう道も探す。

自分で小さく稼ぐ道も考える。

何ができるのか。

何ならまだ売れるのか。

何をやったら、あと十年くらい面白く生きられるのか。

不採用通知は、

「ここではない」

と言っただけだ。

「もう行くところがない」

とは、どこにも書いていなかった。

だから、もう少し探してみる。

誘導棒なら、まだ手にある。

今度こそ、

自分の人生を、次の方向へ誘導するために。

You have not enough Humanizer words left. Upgrade your Surfer plan.

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再起プランナー。現在、現役警備員として働きながら、自らの再起を模索中!

元広告代理店勤め、フリーランスプランナーへ。店舗経営(DJバー)を経て、事業に失敗。

その後、地方ホテル支配人、配送、飲食、施設警備、交通誘導など、さまざまな現場仕事を経験する。

現在は交通誘導警備の現場に立ちながら、仕事の厳しさ、人間模様、収入、失敗談、そして現場で見つけた小さな希望を「警備員ブルース」に記録しています。

人生は、思いどおりにいかなくなってからも、続く。

失業した人、仕事に行くのがつらい人、60代からの働き方に迷っている人へ。成功者の上から目線では全くなく、現場で働く一人として、警備員という仕事の現実と、人生をもう一度立て直すためのヒントを届けます。

失敗しても、人生はそこで終わらない。
現場仕事を「人生の再起の入口」に変える、再起プランナーとして発信しています。

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