
警備員の世界には、実によく働く人がいる。
朝は警備。
夜は別の仕事。
休日も働く。
そんなダブルワーカー、いや、トリプルワーカーさえ珍しくない。
私が出会った「稼ぐ隊長」も、その一人だった。
その隊長は、工事現場では有名人だった。
難しい現場。
交通量の多い現場。
苦情が出やすい現場。
そんな場所へ行くと、よく隊長を務めていた。
仕事は速い。
判断は的確。
隊員への指示も分かりやすい。
職人さんとのやり取りもスムーズ。
だから現場監督からの信頼も厚かった。
「やっぱり、この人は仕事ができるな。」
私はいつもそう思っていた。
ところが、ある時から姿が見えなくなった。
辞めたのかな。
そう思っていたら、隊員の一人が教えてくれた。
「あの人、Uber Eatsやってるらしいよ。」
なるほど。
警備会社は副業を認めているところも多い。
働くも休むも、自分次第だ。
だから、空いた時間を別の仕事に使う人は少なくない。
私も警備を始めた頃は、まだマーケティングの仕事が残っていた。
古いクライアントから相談を受けたり、小さな企画を考えたり。
わずかではあったが、警備以外の収入もあった。
今は、その仕事もほとんどなくなった。
代わりに書いているのが、この「警備員ブルース」である。
そんなある日、誰かが言った。
「隊長、月に五十万円以上稼いでたらしいよ。」
本当かどうかは分からない。
警備員の世界は噂話も多い。
しかし、コロナ禍の頃なら、あながち嘘でもなかったのかもしれない。
あの頃は、Uber Eatsをはじめとする宅配サービスが一気に広がった。
外食が減り、家で食べる人が増えた。
街中を配達バッグを背負って走る人を、毎日のように見かけた。
時代の波に乗った人は、確かに稼いだ。
だが、時代は変わる。
配達員は増えた。
ライバルも増えた。
サービスも増えた。
以前ほど簡単には稼げなくなったという話も耳にする。
どんな仕事も、永遠ではない。
だからこそ、「稼ぐ隊長」の姿が印象に残る。
あの人は、仕事を選り好みする人ではなかった。
目の前にある仕事をきちんとやる。
そして、次の仕事へ向かう。
その繰り返しだった。
私は思う。
たぶん、あの人が稼げた理由は、Uber Eatsだったからではない。
仕事ができる人だったからだ。
警備でも。
配達でも。
相手の立場を考え、段取りを考え、効率を考える。
その積み重ねが、結果として収入につながったのだろう。
そういえば、誰かがこんなことも言っていた。
「隊長、風呂なしアパートに住んでるらしい。」


本当かどうかは分からない。
もし本当なら、ずいぶん質素な暮らしだ。
月にたくさん稼いでいても、生活は意外と地味なのかもしれない。
私は勝手に思う。
いつか風呂付きの部屋へ引っ越せたらいいな、と。
余計なお世話だけれど。
警備員という仕事は、決して楽ではない。
体力も使う。
神経も使う。
夏は暑く、冬は寒い。
だから、この仕事一本で長く生きていくことに不安を感じる人も多い。
私もその一人だ。
だから副業を考える。
ブログを書く。
企画を考える。
AIを使って文章を書く。
何とか警備以外の収入を育てたいと思っている。
「稼ぐ隊長」は、私に一つのことを教えてくれた。
警備員だからといって、警備だけに縛られる必要はない。
時代に合わせて働き方を変える。
新しい仕事に挑戦する。
稼ぐ方法を考え続ける。
それもまた、生きる力なのだ。
今日もどこかで、「稼ぐ隊長」は自転車を走らせているのだろうか。
あるいは、また工事現場で隊長として立っているのだろうか。
私は分からない。
けれど、一つだけ分かることがある。
人生は待っていても変わらない。
走り続ける人だけが、次の景色を見ることができる。
そんな背中を、私はあの隊長から見せてもらった気がしている。
