警備員ブルース|人生の波止場から響くもの

警備員になろうかな、と思ったらまず読んでください。 実体験者が現場で出会った人間たちを、本音で語る警備員の実情。

警備員物語100

【警備員物語74】警備員が似合う芸能人BEST10――勝手に現場配属してみた

投稿日:

ちょいと深刻っぽかったので、箸休めのネタでもやりますか。

ここ数回の『警備員ブルース』は、店を潰した、家族を失った、警備員を辞めたら私は何者なんだ、警備員という仕事に誇りを持てるのか――と、だんだん話が重くなってきた。

このままでは、そのうち誘導棒を持って人生論を説きながら道路の真ん中で座禅を組みかねない。

危険である。警備員が交通障害になってどうする。
というわけで今回は、どうでもいいことを真剣に考える。

題して、

「警備員が似合う芸能人BEST10」
である。

もちろん、ご本人たちが警備員に向いていると言っているわけではない。
あくまで私、現役警備員ハンカクサイゾウの勝手な妄想である。

もし、この人が明日の現場に来たら。
もし、この人と二人で片側交互通行をやったら。
もし、この人が隊長だったら。

そんなことを考えながら、芸能界のスターたちを勝手に警備会社へ入社させてみたい。

本人の承諾は、当然、取っていない。

あくまで私の「妄想」です。

警備員が似合う芸能人の選考基準とは?

せっかくBEST10を決めるのだから、選考基準を設けた。

私はこういうどうでもいいことになると、急に仕事が細かくなる。

審査項目は次の5つである。

①警備服が似合うか
②誘導棒を持ったときの説得力
③「少々お待ちください」が似合うか
④職人・監督・通行人とうまくやれそうか
⑤朝6時集合でも来そうか

特に⑤は重要である。

どんな名優でも、

「すみません。寝坊しました」

では、警備員として使えない。

では発表しよう。

第10位|ムロツヨシ――現場に着いて30分で全員と友達になる警備員

この人は警備そのものより、現場適応能力が高そうである。

朝、初めて行った現場なのに、

「おはようございまーす!」

と入っていって、午前10時には職人から缶コーヒーをもらっていそうだ。

昼には監督と昔からの知り合いみたいになっている。

夕方には、

「ムロちゃん、明日も来る?」💕💕💕

などと言われる。

問題は、しゃべりすぎて車を見ていない可能性があることである。

警備員はコミュニケーション能力も大切だが、

車を見ることはもっと大切である。

ムロさん。後ろからダンプ来てま~す。

第9位|出川哲朗――危険を察知する能力だけは異常に高そうな警備員

工事車両がバックしてくる。

出川警備員、叫ぶ。

「ヤバいよ!ヤバいよ!」

ある意味、警備員として完璧である。

警備とは危険を予測して事故を防ぐ仕事だ。

つまり、

ヤバいものをヤバいと認識する能力

は重要なのである。

ただし、何も起きていないのに、

「ヤバいよ!」

と叫ばれると困る。

通行人も驚く。

職人も驚く。

監督も出てくる。

最終的には隊長から、

「出川さん、ちょっと落ち着いて」

と言われそうである。

第8位|六角精児――なぜか昔からこの現場にいるように見える警備員

これは強い。

警備服を着せた瞬間、

十年選手に見える。

昨日入社したとしても、

「この人、たぶん警備歴18年くらいだな」

と思わせる。

昼休みになると、

「ちょっと、そば食ってきます」

と言って、駅前の立ち食いそば屋へ消える。

戻ってきたら、

なぜか沿線の鉄道事情に詳しくなっている。

そして仕事が終わると、

「じゃ、お疲れさまでした」

と言って電車に乗る。

どこへ帰るのか。

誰も知らない。

翌朝、

またいる。

警備員として完成している。

第7位|鈴木亮平――警備員になる前日に警備業法を全部読んでくる男

この人は逆に怖い。

新人研修で、

「では交通誘導について説明します」

と講師が言った瞬間、

すでにノートが完成していそうである。

警備業法。

道路交通法。

KY活動。

合図の基本。

工事車両の死角。

熱中症対策。

全部勉強してくる。

初日の現場なのに、

私より詳しい。

私は警備歴5年以上である。

困る。

さらに休憩時間には腕立て伏せを始める。

お願いだからやめてくれ。

こちらは菓子パンを食っている。

第6位|サンドウィッチマン伊達みきお――隊長以外に考えられない

これはもう隊長である。

一般隊員ではない。

朝礼で、

「今日はこっち一人、向こう二人ね」

と言われたら、

全員、

「了解です」

となる。

なぜかわからない。

説得力がある。

工事車両の運転手にも、

「すいません、ここちょっと待ってください」

と言えば、

大型ダンプが素直に止まりそうである。

ただし昼飯になると、

「カロリーは警備で消費されるからゼロ」

などと言い出す可能性がある。

知らない。

それについては警備業法にも書いていない。

第5位|大泉洋――朝からずっと現場に文句を言っている警備員

私は、この人と一緒の現場なら一度やってみたい。

朝6時。

集合場所。

「なんでこんな朝早いんだよ!」

現場到着。

「遠いんだよ!」

配置を聞く。

「俺、ここに一日立つの!?」

昼休み。

「休憩これだけ!?」

午後3時。

「まだ終わらないの!?」

私と完全に一致する。

おそらく二人で一日中文句を言っている。

しかし不思議なことに、

仕事はちゃんとやる。

終わった瞬間だけ、

ものすごく機嫌がよくなる。

「終わった!帰るぞ!」

最高である。

これぞ警備員ブルースだ。

第4位|小峠英二――現場トラブルのたびに一言で終わらせる警備員

朝、現場へ行ったら配置が聞いていた話と違う。

「なんて現場だ!」

トイレがない。

「なんて現場だ!」

休憩が来ない。

「なんて現場だ!」

突然残業になった。

「なんて現場だ!」

雨が降ってきた。

「なんて天気だ!」

もうブログを書く必要がない。

小峠さんの一言で全部終わる。

私が74話もかけて書いてきた『警備員ブルース』を、

五文字くらいで片付ける男。

恐るべし。

第3位|遠藤憲一――見た目は怖いが、お婆ちゃんへの誘導がものすごく優しそう

これは見てみたい。

遠藤警備員が立っている。

車が来る。

睨む。

車、

止まる。

まだ誘導棒を上げていない。

顔で止めた。

すごい。

ところが、お婆ちゃんが横断しようとすると、

「ゆっくりで大丈夫ですよ」

急に優しい。

お婆ちゃん、

「ありがとうねえ」

遠藤警備員、

ちょっと照れる。

完璧である。

交通誘導に必要な、

車には強く、人には優しく

を一人で実現している。

第2位|阿部寛――存在しているだけで片側交互通行が成立する

阿部寛が道路に立つ。

誘導棒を持つ。

何も言わない。

車が止まる。

反対側を見る。

向こうの車も止まる。

手を上げる。

一台ずつ進む。

誰も逆らわない。

監督まで、

「阿部さん、次どうします?」

と聞きそうである。

身長もある。

存在感もある。

遠くからでも見える。

警備員にとって、

視認性は重要である。

もしかすると反射ベストすら要らない。

いや、要る。

規則だから着てください。

第1位|柄本明――道路に立っているだけで一本の映画になる警備員

私の第1位は、

柄本明。

派手な誘導はいらない。

道路の端に立っている。

少し猫背。

誘導棒を持っている。

車が来る。

ちょっと手を上げる。

車が止まる。

それだけ。

なのに、

なぜかその男の人生が気になる。

昼休み。

コンビニのおにぎりを食べている。

遠くを見る。

何もしゃべらない。

そこへカラスが一羽飛んでくる。

柄本警備員が言う。

「お前も、一人か」

――映画である。

タイトルは、

『誘導棒の男』。

上映時間2時間17分。

たぶん私は観に行く。

途中で何も起こらない。

それでも観る。

警備員という仕事には、ときどきそういう風景がある。

何も起こらない。

ただ男が立っている。

しかし、その男にも、

そこへ来るまでの人生がある。

だから私は柄本明を第1位にした。

……おっと。

また話が深刻になってきた。

いかん。

今回は箸休めだった。

番外編|警備員が似合う芸能人を考えてわかったこと

こうして芸能人を勝手に警備員にしてみると、

警備員にもいろいろなタイプが必要なのだとわかる。

怖そうな人。

優しそうな人。

よくしゃべる人。

無口な人。

隊長向きの人。

一人現場向きの人。

警備員というと、同じ制服を着て同じヘルメットをかぶっているから、外から見るとみんな同じように見える。

だが、中身は全然違う。

元会社員。

元職人。

元経営者。

元ドライバー。

定年後の人。

若者。

一人暮らし。

家族持ち。

変な人。

ものすごく変な人。

そして、

たまに普通の人。

警備服という同じ衣装の中に、

それぞれ別の人生が入っている。

考えてみれば、

それが『警備員ブルース』で私がずっと書いてきたことなのかもしれない。

そして最後に。

このランキングには、

どうしても入れておかなければならない人物がいる。

芸能人ではない。

有名でもない。

ランキング対象外である。

だから、

第0位。

第0位|ハンカクサイゾウ――似合いたくなかったのに、一番似合ってしまった男

私である。

59歳で警備員になった。

最初は似合わないと思っていた。

いや、

似合いたくなかった。

広告の仕事をしていた。

企画をやった。

DJライブバーを経営した。

ホテルの支配人もやった。

そんな私が、

ヘルメット。

警備服。

安全靴。

誘導棒。

冗談じゃない。

私はこんなところにいる人間ではない。

そう思っていた。

それから五年以上たった。

先日、鏡に映った自分を見た。

警備服。

ヘルメット。

反射ベスト。

誘導棒。

……。

似合っている。

悔しい。

ものすごく似合っている。

広告プランナー時代より似合っているんじゃないか。

店主だった頃より、

しっくりきているんじゃないか。

おい。

やめろ。

誰がそんなに馴染めと言った。

私は警備員を辞めようとしているんだぞ。

なのに、

どう見ても警備員である。

ということで、

栄えある第0位。

ハンカクサイゾウ。

選考理由。

似合いたくなかったのに、似合ってしまったから。

まったく、

ハンカクサイ。

さて。

明日も現場である。

日本一の警備員になるつもりはない。

BEST10に入るつもりもない。

できれば早く終わってほしい。

ただ、

警備服を着て現場に立ったら、

今日もそれなりにやる。

それでいい。

それでは皆さん。

本日の妄想警備員ランキングは、これにて終了。

ご通行の皆さーん、こちらへどうぞー!

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再起プランナー。現在、現役警備員として働きながら、自らの再起を模索中!

元広告代理店勤め、フリーランスプランナーへ。店舗経営(DJバー)を経て、事業に失敗。

その後、地方ホテル支配人、配送、飲食、施設警備、交通誘導など、さまざまな現場仕事を経験する。

現在は交通誘導警備の現場に立ちながら、仕事の厳しさ、人間模様、収入、失敗談、そして現場で見つけた小さな希望を「警備員ブルース」に記録しています。

人生は、思いどおりにいかなくなってからも、続く。

失業した人、仕事に行くのがつらい人、60代からの働き方に迷っている人へ。成功者の上から目線では全くなく、現場で働く一人として、警備員という仕事の現実と、人生をもう一度立て直すためのヒントを届けます。

失敗しても、人生はそこで終わらない。
現場仕事を「人生の再起の入口」に変える、再起プランナーとして発信しています。

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