警備員ブルース|人生の波止場から響くもの

警備員になろうと思ったら、まず読んでください。 現場で出会った人間たち。実体験者が本音で語る警備員のリアル。

警備員物語100

【警備員物語43】立ってるだけで金もらえていいね――じゃあ、ここに立ってみる?

投稿日:

「警備員って、立ってるだけでしょ?」

まあ、そう見えるだろう。

道路の脇に立っている。

工事現場の入口に立っている。

赤い誘導棒を持って、ただ突っ立っている。

工事が動かなければ、警備員もほとんど動かない。

だったら、楽じゃないか。

立っているだけで金がもらえる。

そう思う人がいても不思議ではない。

では、一度ここに立ってみる?

私は、ときどきそう言いたくなる。

警備員は、どこを見ているのか

警備員として現場に立つと、最初にわかることがある。

前だけ見ていればいい仕事ではない。

右を見る。

左を見る。

後ろを見る。

足元を見る。

そして、ときには上を見る。

歩行者が来る。

自転車が来る。

車が来る。

工事車両がバックしてくる。

現場から作業員が出てくる。

子供が突然走り出すこともある。

スマホを見ながら、こちらに気づかず歩いてくる人もいる。

さらに電気工事なら、頭上で作業している場合もある。

つまり警備員は、

前後左右、そして上下。

ほとんど全方向を気にして立っている。

体は止まっていても、目と頭は止められない。

これが「立っているだけ」の正体である。

何も起きなかった。それが仕事の成果だ

警備という仕事には、少し不思議なところがある。

何か素晴らしいものを作って、一日が終わるわけではない。

営業マンのように契約を取るわけでもない。

料理人のように一皿を完成させるわけでもない。

一日の終わりに、

「今日はこれを作りました」

と見せられるものがない。

では、何が残るのか。

何も起きなかった。

事故がなかった。

ケガ人が出なかった。

車と歩行者が接触しなかった。

作業員も無事に帰った。

通行人も、それぞれの日常へ帰っていった。

警備員の成果とは、案外、この「何も起きなかった」なのかもしれない。

目に見えない成果である。

だから、この仕事は外から見るとわかりにくい。

「邪魔だ!」と言われることもある

通行止めをしていると、ときどき怒られる。

「なんで通れないんだよ!」

「いつもここ通ってるんだよ!」

「ちょっとくらいいいだろ!」

気持ちはわかる。

昨日まで通れた道が、今日は通れない。

急いでいるときなら、なおさら腹も立つだろう。

しかし、こちらにも通せない理由がある。

その先で重機が動いているかもしれない。

道路を掘っているかもしれない。

頭上で作業しているかもしれない。

だから、

「申し訳ありません。この先、工事中です」

「恐れ入りますが、こちらから迂回をお願いします」

と説明する。

それでも怒る人はいる。

警備員は、そんなときでも怒り返すわけにはいかない。

安全を守りながら、人とも向き合わなければならない。

これも仕事である。

警備員は意外にしゃべる

「人と話さなくてもできそうだから」

そう思って警備員になる人もいるかもしれない。

だが、交通誘導に関していえば、これは少し違う。

意外にしゃべる。

「おはようございます」

「こちらをお通りください」

「足元、お気をつけください」

「申し訳ありません。ただいま通行止めです」

「少々お待ちください」

「どうぞ」

現場によって必要な言葉も違う。

私は初めて入る現場では、何か起きたときに何と言うかを、あらかじめ頭の中で考えておくことがある。

通行止めなら、迂回路をどう説明するか。

歩道が狭くなるなら、歩行者をどう案内するか。

工事車両が出入りするなら、どこで待ってもらうか。

いざというとき、

「あ、あの、その……」

では困る。

誘導棒だけが警備員の道具ではない。

言葉も警備員の道具なのである。

シャイな人には、ちょっときついかもしれない

だから私は、極端に人へ声をかけるのが苦手な人には、交通誘導は少し大変かもしれないと思っている。

もちろん最初から大声が出る人ばかりではない。

私だって、現場によって戸惑う。

しかし危険が迫ったときには、

「危ない!」

と言わなければならない。

知らない人にも、

「こちらへお願いします」

と声をかけなければならない。

愛想のいい人だけが向いているわけではない。

口下手でもいい。

ただし、必要なときに必要な言葉を出せること。

これは結構大切だと思う。

警備員に向いているのは、どんな人か

何年も現場に立っていると、警備員に向いている人には、ある程度共通点があるように思う。

まず、周囲をよく見る人。

次に、勝手な判断をせず、決められたルールを守れる人。

そして、何も起きていない時間でも集中を切らさない人。

さらに大事なのが、

「自分がここにいる意味」を持てる人だ。

ただ日給のために立つ。

もちろん、それでも仕事は仕事である。

私だって生活のために働いている。

だが、

「自分がここにいることで、事故を一つ防ぐ」

そう考えられるようになると、同じ八時間でも少し違ってくる。

立っていることに意味が生まれる。

ただし、現場選びは重要だ

警備員といっても、仕事は一種類ではない。

道路工事の交通誘導。

建築現場。

駐車場。

イベント警備。

商業施設やオフィスビルなどの施設警備。

仕事内容も、体への負担もかなり違う。

屋外なら、夏は暑い。

冬は寒い。

雨の日もある。

立ちっぱなしになる現場もある。

一方、施設警備なら巡回、受付、モニター監視などが組み合わされる場合もある。

だから、これから警備員をやってみようという人には、

「警備員ができるか」ではなく、「どんな警備なら自分にできるか」

を考えてほしい。

求人票を見るなら、給料だけでなく、勤務場所、仕事内容、休憩、日勤・夜勤、屋内・屋外まで確認したほうがいい。

同じ警備員でも、自分に合う現場と合わない現場がある。

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「立っているだけ」の向こう側

一日の仕事が終わる。

誘導棒のスイッチを切る。

今日も事故はなかった。

誰かから表彰されるわけでもない。

通行人のほとんどは、私の顔など覚えていないだろう。

それでいい。

明日になれば、また別の警備員がそこに立つ。

工事が終われば、警備員そのものがいなくなる。

そして道路には、いつもの日常が戻る。

警備員とは、そういう仕事なのだと思う。

事故が起きないように立つ。

誰かが無事に通り過ぎるために立つ。

何も起こらなければ、その仕事は誰にも気づかれない。

だから私は、ときどき思う。

警備員は、派手なヒーローではない。

名前も残らない。

拍手もない。

それでも今日も、街の片隅で赤い棒を持っている。

「立っているだけ」に見える場所で、何も起こさないために立っている。

それが警備員なんじゃないかな、と思う。

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広告系プランナー、フリープランナーを経て店舗経営に挑戦するも失敗。
その後、地方ホテル支配人、配送ドライバー、飲食、施設警備、交通誘導など、さまざまな現場仕事を経験。
現在は警備の現場に立ちながら、警備員や現場仕事を人生の再起の入口として発信しています。
成功談だけではなく、落ちた側・働く側のリアルを知る者として、
再起を応援する「再起プランナー」として発信中。

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