
質問「警備員って、きついですか?」
答え きつい。(>_<)
正解!
以上。
……では記事にならないので、もう少し書く。
私は59歳で警備員になった。現在64歳。交通誘導を中心に、施設警備やイベント警備なども経験し、気がつけば5年以上になる。
広告や販促の仕事をしていた時代もあれば、店を経営していたこともある。ホテルで働いたことも、配送をやったこともある。
それが人生の後半になって、ヘルメットをかぶり、誘導棒を持って道路に立っている。
人生というものは、なかなか人の予定表どおりには進まない。
そして警備員になって分かった。
この仕事は、確かにきつい。
しかし同時に、きつさには種類がある。
どうにもならない「きつさ」もあれば、ちょっとした工夫でかなり楽になる「きつさ」もある。
さらに言えば、同じ警備員でも、現場によって天国と地獄ほど違う。
今回は、警備員歴5年以上の私が実際に感じてきた「警備員のきつさ」と、64歳になった現在までどうやって仕事を続けてきたのか、警備員の仕事を少しでも楽にする方法を書いてみたい。
これから警備員になろうとしている人にも、現在「もう辞めたい」と思いながら現場に向かっている人にも、何か一つくらい役に立てば幸いである。
警備員はきつい?5年以上働いた私の答えは「現場による」
まず、これを言っておきたい。
「警備員はきつい仕事ですか?」
この質問に対して、
「はい、きついです」
とだけ答えるのは、半分正しくて半分間違っている。
なぜなら、
警備員の仕事は、現場によってきつさがまるで違うからだ。
私はこれまで、交通誘導、工事規制、建築現場、イベント警備、施設警備など、いろいろな警備を経験してきた。
同じ日給でも、
「今日は楽だったなあ」
という日がある。
一方で、
「これで同じ日給なのか!」
と天を仰ぎたくなる日もある。
世の中には不公平というものがあるが、警備現場ほどそれを一日単位で体験できる職業も珍しい。
警備員がきつい理由① 夏の暑さは想像以上に厳しい
交通誘導警備で一番きついものは何か。
私はまず、夏の暑さを挙げたい。
真夏の道路。
アスファルト。
照り返し。
ヘルメット。
長袖の制服。
安全ベスト。
そこへ太陽が、
「お前、本当に今日も立つのか?」
と言わんばかりに照りつけてくる。
立つのである。
仕事だから。
私は警備の現場で熱中症になったこともある。
だから今は、暑さを「気合い」で乗り切ろうとは思わない。
暑さは精神論ではなく、安全管理の問題である。
水分、塩分、休憩、冷却用品。
そして本当に危険だと思ったら、無理をしない。
若いころなら「これくらい大丈夫だ」と思ったかもしれない。
64歳の私は思わない。
大丈夫じゃないものは、大丈夫じゃない。
太陽に勝とうとしてはいけない。
あいつは46億年くらいやっている。
こちらは64年である。
キャリアが違いすぎる。
警備員がきつい理由② 冬は「立っているだけ」が拷問になる
夏とは反対に、冬もきつい。
警備員は動き回る仕事だと思われることもあるが、現場によっては同じ場所に長時間立つ。
これが寒い。
歩いている人は身体が温まる。
作業員は身体を動かしている。
しかし警備員は、
立つ。
誘導する。
また立つ。
寒い。
さらに立つ。
「立っているだけで楽でしょう」
と言われることがある。
だったら真冬の朝、風の吹く道路脇に一時間立ってみてほしい。
たぶん30分くらいで、
「警備員さん、ご苦労さまです」
と言いたくなる。
警備員がきつい理由③ 立ちっぱなしで足・腰が痛くなる
警備員は足腰を使う。
ただしスポーツのような爽快な使い方ではない。
じわじわ使う。
これが曲者である。
朝は平気だったのに、午後2時くらいになると腰が、
「そろそろ話し合おうじゃないか」
と言ってくる。
足も、
「私たちの存在を忘れていませんか」
と訴えてくる。
若い人なら回復も早いだろう。
60代になると、昨日の疲労が今日に残り、今日の疲労が明日に予約を入れてくる。
なかなか繁盛している。
警備員がきつい理由④ トイレに行けない現場がある
これは警備員をやったことのない人には、案外分からない問題だと思う。
トイレである。
現場によっては近くにトイレがない。
コンビニもない。
公園もない。
そして一人現場だったら、自分が持ち場を離れるわけにもいかない。
人間は水分を取らなければならない。
しかし水分を取ればトイレに行きたくなる。
ところがトイレがない。
これは哲学である。
いや、哲学ではない。
ただ困っているだけである。
だから私は、初めて行く現場ではトイレの場所を早めに確認することを非常に重要視している。
警備員がきつい理由⑤ 現場が遠いと仕事より通勤で疲れる
これも大きい。
警備員の場合、毎日同じ勤務先とは限らない。
今日は近い。
明日は遠い。
明後日は、
「ここ東京か?」
と思うほど遠い。
現場が朝8時開始なら、8時に家を出ればいいわけではない。
着替えや集合時間を考えれば、かなり早く着かなければならない。
そのため朝5時台に家を出ることもある。
そうなると、実働8時間よりも家を出てから帰宅するまでの拘束時間のほうが重要になってくる。
私は最近、この「現場までの距離」をかなり重視するようになった。
日給だけ見てはいけない。
通勤時間も仕事のきつさの一部である。
警備員がきつい理由⑥ 休憩できる場所がない
休憩時間がある。
だから休める。
そう思うだろう。
ところが、
休憩する場所がない。
そんな現場がある。
夏。
日陰なし。
冬。
風よけなし。
椅子なし。
休憩所なし。
そして私だけがいる。
「では、ここで休憩してください」
と言われても、
ここって、どこだ。
ということになる。
警備員の求人を見るとき、給与や勤務時間を見る人は多いと思う。
しかし実際に長く続けるなら、休憩環境はかなり重要だ。
警備員がきつい理由⑦ 人間関係とカスハラが地味に疲れる
身体だけではない。
人間にも疲れる。
作業員、現場監督、通行人、ドライバー、そして同じ警備員。
もちろん、いい人もたくさんいる。
しかし時々、
「どうして今日、この人と私が出会わなければならなかったのだろう」
という人もいる。
警備員は、人にお願いする仕事でもある。
「少々お待ちください」
「こちらをお通りください」
「車両が出ますので、お気をつけください」
大部分の人は普通に協力してくれる。
しかし100人いれば、一人くらい、
待てない人
が現れる。
その一人が、残り99人分の平穏を持っていく。
警備員の仕事を少しでも楽にする10の方法
さて。
ここまで読んで、
「やっぱり警備員、きついじゃないか」
と思った人もいるだろう。
その通りである。
だが5年以上やっていると、こちらにも多少の知恵がついてくる。
ここからが本題だ。
警備員を楽にする方法① 現場までの距離を甘く見ない
私はこれをかなり重要だと思っている。
日給が同じなら、
片道30分の現場と、
片道1時間30分の現場。
どちらが楽か。
考えるまでもない。
往復で2時間違う。
週5日なら10時間違う。
つまり、通勤時間は見えない労働時間なのである。
警備会社を選ぶときには、給与だけではなく、
- どの地域の現場が多いのか
- 自宅から何分くらいなのか
- 直行直帰できるのか
まで確認したほうがいい。
警備員を楽にする方法② トイレの場所を最初に確認する
現場に着いたら、
作業内容。
配置。
危険箇所。
そして、
トイレ。
私はこれを確認する。
「警備員なのに最初にトイレか」
と思われるかもしれない。
しかし、切実なのである。
特に中高年になれば、これは笑い話では済まない。
トイレの場所が分かっているだけで、心理的な負担もかなり違う。
警備員を楽にする方法③ 靴を軽視しない
警備員は長時間立つ。
だから、靴は重要である。
合わない靴で一日立っていると、足だけではなく膝や腰までつらくなる。
私は「制服は会社から支給されるから、それで全部終わり」とは考えないほうがいいと思っている。
靴やインソールなど、身体と地面の間にあるものには気を使ったほうがいい。
毎日何時間も身体を預ける道具だからだ。
警備員を楽にする方法④ 夏と冬は「装備」で戦う
暑さに根性。
寒さに根性。
雨にも根性。
風にも根性。
そういう時代ではない。
夏なら冷却用品、水分、塩分、着替えなど。
冬なら防寒インナー、手袋、ネックウォーマーなど。
現場の規則や制服の指定を守りながら、使えるものは使う。
我慢を減らすことも仕事の技術である。
警備員を楽にする方法⑤ 休めるときは、ちゃんと休む
若いころの私は、休むことに妙な罪悪感があった。
しかし今は違う。
休憩時間なら休む。
座れるなら座る。
水を飲む。
身体を休ませる。
午後も安全に誘導するために休憩するのである。
休むことはサボることではない。
次の勤務時間を安全に働くための仕事の一部だ。
警備員を楽にする方法⑥ 昼飯を食べすぎない
これは私の場合だが、昼に腹いっぱい食べると午後がつらい。
眠くなる。
身体が重くなる。
そして午後1時。
太陽だけが元気である。
だから、勤務日の昼食は「満腹になること」より、午後に動けることを考えたほうがいい。
食事まで現場仕様になる。
なんだか悲しい。
だが、生き延びる知恵である。
警備員を楽にする方法⑦ 嫌な人間と必要以上に付き合わない
現場にはいろいろな人がいる。
合う人。
合わない人。
よくしゃべる人。
まったくしゃべらない人。
なぜか朝から機嫌の悪い人。
全部まともに受け止めていたら疲れる。
仕事上必要なコミュニケーションはする。
しかし、それ以上まで無理して仲良くなる必要はない。
人間関係にも適切な警戒距離がある。
警備員なのだから、この辺は得意になりたいものである。
警備員を楽にする方法⑧ 一人現場は「孤独」ではなく「自由」と考える
一人現場には一人現場のきつさがある。
何かあったときに相談しにくい。
休憩も取りにくい場合がある。
しかし逆に言えば、
人間関係がない。
妙な先輩もいない。
横から細かく言われることもない。
安全さえきちんと守れば、自分のペースで仕事ができる。
私は一人現場について、
孤独と自由は、案外となり同士なのだ
と思うことがある。
警備員を楽にする方法⑨ 自分に合う警備の種類を探す
警備員といっても、仕事は一種類ではない。
交通誘導。
施設警備。
イベント警備。
駐車場。
建築現場。
道路工事。
同じ交通誘導でも、現場によって仕事はまるで違う。
だから、
「この現場がきつい」
と感じたとき、
すぐに、
「私は警備員に向いていない」
と結論を出さなくてもいい。
その現場が自分に向いていないだけかもしれない。
これは5年以上やってきて、かなり重要だと思うようになった。
警備員を楽にする方法⑩ 本当にきついなら、警備員を辞めてもいい
最後に、とんでもない方法を書いておく。
警備員を辞める。
「警備員を楽にする方法」という記事の最後がこれでは、身も蓋もない。
しかし私は冗談で書いているわけではない。
身体を壊してまで続ける必要はない。
毎朝、
「行きたくない」
と思い続けているなら、ほかの仕事を探してもいい。
警備員をやりながら転職活動をしてもいい。
マンション管理。
施設管理。
ビルメンテナンス。
ドライバー。
清掃。
事務。
あるいは、まったく別の仕事。
64歳の私自身、警備員の次を考えている。
仕事は人生を維持するためにある。
仕事のために人生を壊したら、話が逆である。
60代の警備員は若い人と同じ働き方をしなくていい
私はもうすぐ65歳になる。
20代でも30代でもない。
だから最近は、
「もっと頑張らなければ」
ではなく、
「どうすれば身体を削らずに働けるか」
を考えるようになった。
これは逃げではないと思っている。
60代には60代の働き方がある。
若い人より体力が落ちているなら、知恵を使えばいい。
遠い現場を避ける。
無理な勤務を減らす。
装備を工夫する。
休憩をきちんと取る。
自分に合った現場を選ぶ。
そして、その間に次の仕事も考える。
警備員を続けるにしても、辞めるにしても、
自分の身体を最後まで使い切ってしまわないこと。
それが一番大事なのではないかと思う。
「警備員はきつい」だけで終わらせない
警備員はきつい。
これは本当だ。
しかし、
「きついから我慢する」
か、
「きついから辞める」
か。
選択肢は、その二つだけではない。
きつさを減らす。
これがある。
現場を変える。
働く日数を変える。
装備を変える。
考え方を変える。
会社を変える。
そして必要なら、仕事そのものを変える。
誘導棒を振りながら、私は最近そんなことを考えている。
道路では毎日、
「こちらへどうぞ」
と人や車を誘導している。
だったら、自分自身にも言ってやればいい。
「そっちは、きつすぎるぞ」
「少し楽なほうへ行け」
「無理して直進する必要はない」
人生に交通規制があるのなら、迂回したって構わない。
警備員を辞めたい64歳。では次に何をする?
さて。
ここまで「警備員の仕事を楽にする方法」を書いてきた。
ところが私は今、自分自身にもう一つの問題を抱えている。
警備員を楽にして、その先どうするのか。
私は警備員を一生続けるためだけに、楽な方法を探しているわけではない。
警備員として働きながら、次の仕事を探してもいる。
64歳。
もうすぐ65歳。
転職市場から見れば、なかなかの年代である。
求人票の前に立つと、道路工事の大型車より圧迫感がある。
それでも探す。
なぜなら私は、警備員を人生の終着駅にはしたくないからだ。
警備員は、この5年以上、私の生活を支えてくれた。
店を失い、仕事を転々とし、最後のほうで私を拾ってくれた仕事でもある。
だから馬鹿にはしない。
だが、
感謝することと、そこに一生いることは別である。
警備員という仕事を足場にして、次へ行く。
では、60代の警備員には、どんな転職先があるのだろう。
マンション管理人か。
施設管理か。
ビルメンか。
それとも、まったく別の仕事か。
次は、そのことを考えてみようと思う。
道路の車両なら、私は毎日誘導している。
問題は、
自分の人生を、どちらへ誘導するかである。
64歳。
警備員歴5年以上。
本日も勤務終了。
だが――
人生の交通誘導は、まだ終わっていない。
