警備員ブルース|人生の波止場から響くもの

警備員になろうかな、と思ったらまず読んでください。 実体験者が現場で出会った人間たちを、本音で語る警備員の実情。

警備員物語100

【警備員物語24】トロトロ隊長――静かなパチプロは、今日も現場で笑っている

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警備員の世界には、不思議な人がいる。

怒鳴らない。

焦らない。

急がない。

何を話しても、ゆっくり。

返事もゆっくり。

歩くのも、どこかゆっくり。

まるで時間だけが、その人の周りでは少し遅く流れているようだった。

私は密かに、その隊長を**「トロトロ隊長」**と呼んでいる。

もちろん本人は知らない。

悪口ではない。

私なりの親しみを込めた呼び名である。

「あぁ……大丈夫ですよぉ」

朝、現場へ着く。

職長や監督は忙しそうに動いている。

職人さんたちも慌ただしい。

そんな中、一人だけ空気の流れが違う人がいる。

「おはようございます。」

と挨拶すると、

「あぁ……おはようございますぅ。」

ゆっくり返ってくる。

「今日はここですねぇ。」

「車はあっちから来ますからねぇ。」

話し方が実に柔らかい。

急かすような言い方をしない。

命令口調にもならない。

それでいて、現場はちゃんと回る。

不思議な隊長だった。

なぜか安心する

警備員という仕事は、隊長一人で現場の空気が変わる。

怒鳴る隊長もいる。

神経質な隊長もいる。

何でも細かく指示を出す隊長もいる。

それぞれ悪いわけではない。

現場を守るためには必要な場面もある。

しかし、トロトロ隊長の現場へ入ると、不思議と肩の力が抜ける。

「あわてなくていいですよぉ。」

そんな言葉を聞くだけで、現場全体が少し穏やかになる。

私は、この人の現場が好きだった。

「休みの日は何してるんですか?」

ある日、休憩中に何気なく聞いてみた。

「休みの日は何をしてるんですか?」

隊長は少し笑って言った。

「パチンコですねぇ。」

私は思わず聞き返した。

「毎回ですか?」

「ほとんどですねぇ。」

さらに話を聞くと、ただ遊んでいるわけではなかった。

負けっぱなしではない。

むしろ、勝っている。

もちろん、一日で何十万円も勝つような派手な話ではない。

だが、月にすると、ちょっとした小遣いどころではないらしい。

「すごいですね。」

と言うと、

「まぁ……少しずつですよぉ。」

と笑う。

それ以上、自慢もしない。

得意顔にもならない。

それでも警備員を辞めない

私は単純に思った。

「そんなに勝てるなら、警備なんかしなくてもいいじゃないですか。」

すると隊長は首を横に振った。

「いやぁ……それじゃ生活はできませんよぉ。」

なるほどと思った。

勝っているとはいえ、毎月必ず同じ金額になるわけではない。

波もある。

だから仕事は辞めない。

警備員として働き、休日に好きなパチンコを楽しむ。

そのバランスを崩さない。

実に堅実なのである。

私は、ここにこの人らしさを見た。

ギャンブルをしているというより、自分の生活をきちんと計算している人なのだ。

焦らない人は強い

私は勝手な想像をした。

パチンコでも、この人はきっと焦らないのだろう。

熱くならない。

負けを取り返そうと無理をしない。

「今日はこんなもんですねぇ。」

そんな感じで帰るのではないだろうか。

だから大きく負けない。

だから長く続けられる。

そして、それは警備の仕事にも通じている。

慌てない。

怒らない。

無理をしない。

感情で動かない。

だから現場でも事故が少ない。

警備という仕事は、意外と性格が出る。

トロトロ隊長は、その「ゆっくり」が武器になっていた。

人は見かけによらない

警備員という仕事を始めて思うことがある。

人は、本当に見かけによらない。

元料理人がいる。

元営業マンがいる。

元大工がいる。

ミュージシャンもいる。

役者もいる。

そして、休日にはパチンコで堅実に勝ち続けている隊長もいる。

履歴書だけでは、その人は分からない。

一緒に現場へ立って、昼飯を食べて、雑談をして、ようやく見えてくるものがある。

警備員の世界は、人生の吹きだまりと言われることがある。

私は半分は当たっていると思う。

しかし、もう半分は違う。

ここには、それぞれの人生を背負った人たちが集まっている。

その人生は、一人ひとり違う。

だから面白い。

私が学んだこと

私は昔、広告の仕事をしていた。

企画を考え、人前で話し、締め切りに追われる毎日だった。

何でも速く。

早く。

急げ。

そんな世界だった。

だから最初は、トロトロ隊長を見て、

「もっと早く話せばいいのに。」

と思ったこともある。

ところが、一緒に現場へ入るうちに考えが変わった。

ゆっくり話す人は、人を落ち着かせる。

慌てない人は、周囲も慌てさせない。

それもまた、一つの才能なのだ。

隊長は今日も、穏やかな声で言う。

「あぁ……今日は暑いですねぇ。」

その一言で、現場の空気が少し和らぐ。

パチンコで勝つ秘訣も、警備で事故を起こさない秘訣も、案外同じなのかもしれない。

焦らないこと。

欲張らないこと。

そして、自分のペースを崩さないこと。

私は今日も、そんなトロトロ隊長の背中を見ながら思う。

人生は速く走る人だけが勝つわけじゃない。

ゆっくり歩く人だからこそ、見える景色もあるのだ。

いっそのことパチンコ屋さんのガードマンになっちまえばぁ!

それも悪くないけど、警備じゃあもうからんからなぁぁ!!( ´艸`)

-警備員物語100

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再起プランナー。現在、現役警備員として働きながら、自らの再起を模索中!

元広告代理店勤め、フリーランスプランナーへ。店舗経営(DJバー)を経て、事業に失敗。

その後、地方ホテル支配人、配送、飲食、施設警備、交通誘導など、さまざまな現場仕事を経験する。

現在は交通誘導警備の現場に立ちながら、仕事の厳しさ、人間模様、収入、失敗談、そして現場で見つけた小さな希望を「警備員ブルース」に記録しています。

人生は、思いどおりにいかなくなってからも、続く。

失業した人、仕事に行くのがつらい人、60代からの働き方に迷っている人へ。成功者の上から目線では全くなく、現場で働く一人として、警備員という仕事の現実と、人生をもう一度立て直すためのヒントを届けます。

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現場仕事を「人生の再起の入口」に変える、再起プランナーとして発信しています。

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