警備員ブルース|人生の波止場から響くもの

警備員になろうかな、と思ったらまず読んでください。 実体験者が現場で出会った人間たちを、本音で語る警備員の実情。

警備員物語100

【警備員物語21】無口のダッグ――「マッチ&アリー」の証明。警備はしゃべるだけの仕事ではない。

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警備員という仕事は、声が大きい人が向いている。

私は最初、そう思っていた。

「こちらをお通りください。」

「少々お待ちください。」

「お気をつけください。」

歩行者や車を誘導するのだから、よくしゃべる人ほど仕事ができるのだろう、と。

ところが、その思い込みを覆す二人に出会った。

二人は別々の現場だった。

親戚でもない。

知り合いでもない。

年齢も違う。

共通していたのは、一つだけ。

驚くほど無口だった。

私は心の中で、この二人を「無口のダッグ」と呼んでいる。

ダッグとは、二人組という意味だ。

現場は違うのに、不思議なくらい同じ空気を持っていた。

仕事中、ほとんどしゃべらない。

雑談もしない。

自分の話もしない。

休憩時間も静かだ。

もちろん、必要なことは言う。

「お気をつけください。」

「どうぞ。」

「ありがとうございます。」

その一言だけは、きちんと相手に届く。

余計なことは言わない。

だが、それで仕事は十分に回っていた。

いや、むしろよく回っていた。

最初のうちは、「もう少し話したほうがいいんじゃないか」と思った。

ところが、一緒に仕事をしていると考えが変わる。

目線がいい。

立ち位置がいい。

誘導棒の振り方が正確だ。

歩くタイミングも絶妙だ。

何より、相手の動きをよく見ている。

「今、車を止めたい。」

「歩行者を先に流そう。」

そんなことが、言葉を交わさなくても伝わってくる。

警備という仕事は、声だけでするものではない。

目で伝える。

体で伝える。

立ち姿で伝える。

誘導棒で伝える。

言葉にならない合図が、現場にはたくさんある。

私はその二人を見ながら、あることに気づいた。

人間は、しゃべる量よりも、伝わる量のほうが大切なのだ。

よくしゃべる人が悪いわけではない。

ラジオ平さんのように、現場を明るくしてくれる人もいる。

それも一つの才能だ。

しかし、無口だから仕事ができないというわけでもない。

むしろ、無口だからこそ周囲をよく見ている人もいる。

警備はサービス業でもある。

だから言葉は大切だ。

けれど、それ以上に大切なのは安心感だ。

「あの人が立っているから大丈夫。」

そう思わせる存在感。

それは言葉だけでは生まれない。

落ち着いた表情。

無駄のない動作。

丁寧なお辞儀。

相手を急かさない態度。

そういう一つ一つが、安心をつくっている。

私はこの二人を見ていて、ふと映画やドラマに出てくる名コンビを思い出した。

一人が多くを語り、一人が黙って支える。

言葉が多い者と、言葉が少ない者。

そのどちらにも役割がある。

だから私は、この二人を勝手に「マッチ&アリー」と呼ぶことにした。

もちろん本人たちは、その名前を知らない。

私の心の中だけの呼び名である。

警備の現場には、本当にいろいろな人がいる。

おしゃべりな人。

無口な人。

怒りっぽい人。

優しい人。

そして、その誰もが現場を支えている。

人には、それぞれの仕事の仕方がある。

大切なのは、自分の個性を仕事に生かすことだ。

無理にしゃべる必要はない。

無理に目立つ必要もない。

必要な言葉を、必要なときに。

あとは、動作で語ればいい。

警備を始める前の私は、「警備は声を張り上げる仕事」だと思っていた。

しかし今は違う。

警備とは、人を安心させる仕事である。

そして安心とは、言葉だけでは生まれない。

目線。

立ち姿。

動作。

表情。

そのすべてが一つになって、初めて伝わるものなのだ。

無口のダッグ。

いや、「マッチ&アリー」。

二人は何も教えようとはしなかった。

だが私は、その背中から、警備という仕事のもう一つの奥深さを教えられたのである。

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再起プランナー。現在、現役警備員として働きながら、自らの再起を模索中!

元広告代理店勤め、フリーランスプランナーへ。店舗経営(DJバー)を経て、事業に失敗。

その後、地方ホテル支配人、配送、飲食、施設警備、交通誘導など、さまざまな現場仕事を経験する。

現在は交通誘導警備の現場に立ちながら、仕事の厳しさ、人間模様、収入、失敗談、そして現場で見つけた小さな希望を「警備員ブルース」に記録しています。

人生は、思いどおりにいかなくなってからも、続く。

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