警備員ブルース日誌

警備員の現場でわかる街の性格|東京の土地ごとに違う空気と人間模様

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工事現場の警備員をやっていると、都内のいろいろな街に行く。
杉並、練馬、世田谷、板橋、渋谷、新宿、北区――。

同じ交通誘導の仕事でも、立つ場所が違えば、空気が違う。
通る人の歩く速さ、声のかけ方、クレームの出方、ちょっとした表情まで違う。

警備員の仕事は、ただ立っているだけに見えるかもしれない。
だが、何年も都内のあちこちの現場に立っていると、だんだん見えてくるものがある。
この街にはこの街の“性格”がある、ということだ。

気がつけば、警備員の仕事は少しだけ文化人類学に似てくる。
いや、もっと俗っぽく言えば、**「クレーマー人類学」**かもしれない。

警備員の仕事は、街ごとの違いが見える仕事

警備員は、ひとつの会社にいても、毎日同じ場所に行くとは限らない。
工事の都合で、さまざまな地域に配置される。

そのたびに思う。
東京はひとつではない。
同じ都内でも、土地によって人の気質はかなり違う。

たとえば、道をふさいだときの反応ひとつとっても違う。
「すみません、こちらからお願いします」と言えば、素直に従ってくれる地域もある。
逆に、最初からけんか腰で来る地域もある。

もちろん、どこの土地にも親切な人もいれば、嫌な人もいる。
ただ、長く現場に立っていると、やはり傾向というものは感じる。

杉並・世田谷・板橋・北区で感じる街の空気の差

杉並あたりは、全体に少し落ち着いている印象がある。
住宅地の雰囲気が強く、急いでいてもどこか理屈が通る人が多い。
こちらがきちんと説明すれば、比較的納得してくれることが多い。

世田谷になると、場所によってかなり空気が変わる。
高級住宅街寄りの現場では、住民の要求水準が高い。
言葉づかいも見られている感じがする。
雑な対応をすると、すぐに不信感につながる。

板橋や北区は、もう少し生活感が前に出てくる。
下町的な気安さを感じることもあるし、逆に遠慮なく不満をぶつけてくる人もいる。
ただ、腹を割っているぶん、変にねちねちしない場合もある。
その場で言うことを言って、済めば終わる。そんな感じもある。

渋谷や新宿の警備は“都会の流儀”がある

渋谷や新宿は、人の数も多いし、歩くスピードも違う。
立っているだけで神経を使う。
通行人、自転車、搬入車、作業員、外国人観光客まで入り乱れる。

だが、不思議なことに、渋谷では意外と感じのいい人に出会うことがある。
富裕層が多い地域、あるいは余裕のある人が多いエリアでは、警備員に対してきちんと「ご苦労さま」「ありがとう」と言ってくれる人がいる。

こちらとしては、それだけで少し救われる。
炎天下でも、寒風の中でも、そういう一言で持ち直せることがある。

新宿はまた別で、雑多さの中に都市の慣れがある。
良くも悪くも、みんな急いでいる。
だから、説明は短く、誘導は明確に、が鉄則になる。
迷わせるとイライラされる。
新宿の現場では、判断の遅さがそのままトラブルにつながりやすい。

練馬の警備で有名な“クレーマー問題”とは

そして、個人的に印象が強いのが練馬である。

なぜか練馬は、昔から「気をつけろ」と言われることがある。
特に、同じクレーマーの話が何年も前から現場で語られているのだ。

「あのへんは要注意」
「またあの人が来るかもしれない」
そんな話が、警備会社の中で半ば伝説のように共有されていることがある。

もちろん、練馬の人すべてがそうではない。
親切な人もたくさんいる。
ただ、ひとり強烈なクレーマーがいるだけで、その土地の印象はかなり変わる。

そして厄介なのは、そういう人ほど、理屈ではなく感情で押してくることだ。
工事の必要性を説明しても通じない。
こっちの言葉尻をとらえる。
会社名を聞く。
責任者を出せと言う。
数年前から同じ話題が出るということは、それだけ現場で“名物化”しているのだろう。

警備員の間で土地の名前と一緒にクレーマー情報が蓄積されていく。
これはもう、ちょっとした現場民俗学である。

警備員は街を観察する仕事でもある

交通誘導の仕事は、ただ棒を振るだけではない。
立って、見て、聞いて、街の流れを読む仕事でもある。

どんな人が多いか。
どんな言い方をすると反発されるか。
逆に、どう声をかけると通じるか。
土地によって、その正解が少しずつ違う。

それを毎日のように体で覚えていくと、警備員はだんだんその街の空気に敏感になる。
今日はこの町だから、少し丁寧に行こう。
この地域は自転車が多いから早めに声を出そう。
ここはクレームが出やすいから、最初から説明を厚くしよう――。

そんなふうに、ただの現場仕事が、いつのまにか人間観察の仕事になっていく。

警備員を長くやると、東京がガイドブックとは違って見えてくる。
住みたい街ランキングではわからない、土地土地の癖が見えてくる。
それは案外、おもしろい。

クレーマー人類学としての警備員ブルース

大げさに言えば、警備員は街の最前線で人間を見る仕事だ。
しかも、わりとむき出しの人間を見る。

急いでいる人。
余裕のある人。
他人にきつい人。
妙に親切な人。
毎回文句を言う人。
なぜか警備員だけには優しい人。

そういう人たちが、土地ごとに少しずつ違う顔を見せる。
これを観察していると、東京という巨大な街も、ずいぶん細かい“部族”の集まりに見えてくる。

警備員ブルースとは、ただ愚痴を書く場所ではない。
現場から見える、街と人間の記録でもある。
言ってみれば、これはクレーマー人類学のフィールドノートなのかもしれない。

警備員の仕事は、意外と奥が深い

世間では、警備員の仕事を単純労働と思う人も多い。
しかし実際には、土地柄を読む力、人をさばく力、感情を受け流す力が必要になる。

しかも、経験を重ねるほど、その差がわかってくる。
「あの街はこうだ」
「この場所ではこう振る舞うべきだ」
そんな知恵が、少しずつ身についてくる。

だから警備員の仕事は、決してただ立っているだけではない。
東京の街を、表からも裏からも知ることができる、なかなか奥の深い仕事なのである。

警備の仕事を探している人へ

もし今、仕事を探しているなら、警備員という選択肢は思っている以上に悪くない。
たしかに楽ではない。
暑さ寒さもあるし、クレーマーに当たる日もある。

だがそのぶん、街のリアルが見える。
人間の本音が見える。
そして、自分なりの現場感覚が育っていく。

未経験からでも入りやすく、年齢を問わず始めやすいのも警備の強みだ。
「今の自分でも働ける場所を探したい」
「まずは生活を立て直したい」
そういう人には、十分現実的な仕事だと思う。

警備員ブルースを読んで、少しでもこの仕事に興味が出た人は、条件のいい求人を一度見てみてほしい。
会社によって、現場の回し方も、待遇も、働きやすさもかなり違う。
どうせ入るなら、自分に合う現場、自分をちゃんと扱ってくれる会社を選んだほうがいい。

-警備員ブルース日誌

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