警備員ブルース|人生の波止場から響くもの

警備員になろうと思ったら、まず読んでください。 現場で出会った人間たち。実体験者が本音で語る警備員のリアル。

警備員の100日物語

【警備員物語09】スナックのママ風警備員 ― 女の底力を見る

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工事現場という場所は、不思議だ。

朝、作業服姿の男たちが集まり、ヘルメットをかぶり、今日の仕事が始まる。

そんな中で、一人だけ少し違う空気をまとった女性警備員がいた。

私は心の中で、彼女を「ママ」と呼んでいた。

地方都市の駅前にある、小さなスナック。

カウンターの向こうで「いらっしゃい」と微笑んでいそうな雰囲気。

派手ではない。

地味でもない。

どこか落ち着きがある。

そんな女性だった。

スカート姿で現場に現れる警備員

初めて見たときは驚いた。

現場に現れた彼女は、スカート姿だった。

「今日は警備じゃないのかな。」

そう思って見ていると、おもむろにスカートを外した。

すると、中から制服のズボンが現れた。

上着を羽織る。

ヘルメットをかぶる。

それだけで、立派な女性警備員になる。

そして仕事が終わると、今度は逆だ。

制服のズボンをめくり上げ、その上からスカートを履く。

再び、街へ戻る一人の女性になる。

その姿が妙に印象に残った。

警備員の制服だけではそのまま帰らない

実は私も少し似ている。

制服のズボンの下には、いつも薄いスポーツスラックスを履いている。

仕事が終わると、制服だけ脱いで帰る。

そのままスーパーへ寄ることもある。

定食屋へ入ることもある。

警備員の格好のまま歩くのは、どうにも落ち着かない。

仕事と自分の生活を、どこかで切り替えたいのだ。

だから彼女の気持ちが、何となく分かる。

彼女もまた、警備員である前に、一人の女性として街を歩きたいのだろう。

母親であるという誇り

噂では、育ち盛りの息子さんがいるらしい。

詳しいことは聞かない。

警備員同士というのは、不思議な距離感がある。

毎日顔を合わせても、深く踏み込まない。

それでも何となく、人づてに耳へ入ってくることがある。

彼女は仕事の愚痴をあまり言わない。

黙々と働く。

必要なことだけ話す。

言うべきことは、きちんと言う。

現場では意外なほどしっかりしている。

隊長の指示にも冷静に対応する。

周りに流されない。

その姿を見ていると、「母親」というものの強さを感じることがある。

誰かに認めてもらうためではない。

生活を支えるため。

家族を守るため。

そんな覚悟が、どこか漂っている。

捨てなかったもの、今を育てる。

私は広告代理店で企画を考え、コピーを書いてきた。

店もやった。

音楽にも夢中になった。

警備員になった今でも、その頃の自分を捨てたとは思っていない。
妙な誇りだと人はいうが、そんなこと関係ない。そもそものはじまりがなければ、今はない。

文章を書くことも。

企画を考えることも。

今も私の中に生きている。

そして、彼女も同じなのではないか。

制服を着ていても、女性であることを捨てない。

母親であることを忘れない。

だから現場へ来るときも、帰るときも、スカートを身にまとう。

誰に見せるわけでもない。

自分自身のために。

それは小さなことのようでいて、大きな意思なのだと思う。

存在の底力

警備会社へ入るまでは、女性警備員は少ないと思っていた。

実際には、思っていた以上に多い。

そして皆、それぞれの事情を抱えて働いている。

子育て。

家族。

生活。

将来。

男たちは、つい肩書や過去の武勇伝を語りたがる。

女性たちは、案外それを語らない。

ただ、静かに働く。

その姿の中に、私は何度も「底力」を見た。

ママも、その一人だった。

現場では無口。

決して目立とうとはしない。

けれど、自分の芯だけは決して曲げない。

そんな人だった。

私は彼女を見るたびに思う。

人は仕事だけでできているわけではない。

警備員という制服の下には、それぞれ守り続けているものがある。

私なら「書くこと」。

ママなら「女性であること」。

そして「母親であること」。

その誇りは、制服では隠せない。

だから私は今日も、彼女の後ろ姿を見ながら心の中でつぶやく。

「やっぱり、ママは強いな。」

-警備員の100日物語

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広告系プランナー、フリープランナーを経て店舗経営に挑戦するも失敗。
その後、地方ホテル支配人、配送ドライバー、飲食、施設警備、交通誘導など、さまざまな現場仕事を経験。
現在は警備の現場に立ちながら、警備員や現場仕事を人生の再起の入口として発信しています。
成功談だけではなく、落ちた側・働く側のリアルを知る者として、
再起を応援する「再起プランナー」として発信中。

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