警備員ブルース|人生の波止場から響くもの

警備員になろうと思ったら、まず読んでください。 現場で出会った人間たち。実体験者が本音で語る警備員のリアル。

警備員物語100

【警備員物語25】建築現場のおもしろおっちゃんが作るのは、建築物だけじゃなく!

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建築現場は朝が早い。

土木工事なら九時開始という現場もあるが、建築は八時スタートが珍しくない。

警備員も、そのぶん早く現場へ向かう。

まだ眠気が残る時間帯だ。

コンビニでコーヒーを買い、眠い目をこすりながら現場へ着く。

ところが、建築現場には、その眠気を吹き飛ばすようなおっちゃんがいる。

私が現場へ着くと、すでに一人のおじさんがいた。

知り合いでもない。

初対面だ。

それなのに、

「おっ!」

と、まるで昨日も一緒に仕事をした仲間のように声を掛けてくる。

「今日は生コンだからよ!」

「四台来たら終わりだ!」

「ガーッとやって、パーッと終わり!」

勢いだけはものすごい。

しかし、何を言っているのか半分くらいしか分からない。

いや、三分の一かもしれない。

訛りが強い。

早口だ。

しかも独特の言い回しが混ざる。

日本語のはずなのに、外国語を聞いているような気分になる。

それでも不思議と嫌な感じはしない。

何となく伝わるのである。

しばらくすると、もう一人のおじさんが出勤してきた。

「おう!」

「おう!」

二人は笑いながら話し始める。

地方の話。

田舎の話。

親戚の話。

競馬だか競輪だか、博打の話。

何がそんなに面白いのか分からないが、二人とも朝から大笑いしている。

私は警備の準備をしながら、その様子を眺めていた。

仕事はまだ始まっていない。

けれど、現場にはもう活気がある。

建築現場のおっちゃんたちは、朝から元気だ。

よくしゃべる。

よく笑う。

そして、よく働く。

時間になると、生コン車がやって来る。

さっきまで笑っていたおっちゃんが、一気に職人の顔になる。

「こっち!」

「もう少し!」

「はい、止めて!」

さっきまでの冗談はどこへ行ったのか。

動きは素早い。

無駄がない。

現場が生き物のように動き始める。

私は思う。

建築現場には独特の文化がある。

職人同士の言葉。

長年一緒に働いてきた者だけが分かる呼吸。

初めて入った人には何を話しているのか分からない。

しかし、彼らにはちゃんと通じている。

まるで方言のようだ。

いや、建築現場だけの「現場語」と言ったほうがいいのかもしれない。

私は広告代理店にもいた。

ホテルの支配人もやった。

飲食店も経営した。

どの業界にも独特の言葉がある。

建築も同じだ。

専門用語だけではない。

話し方そのものが文化なのだ。

そして、その文化を支えているのが、おっちゃんたちなのである。

暑くても笑う。

寒くても笑う。

仕事は真剣。

休憩は大笑い。

切り替えが実に見事だ。

警備員をやっていると、職人さんと接する機会が多い。

最初は怖そうに見える人もいる。

ぶっきらぼうな人もいる。

しかし、話してみると、人情味のある人が実に多い。

朝一番から現場を明るくしてくれる。

そんなおっちゃんたちがいるから、建築現場は今日も動き出す。

私には今でも、あの日の勢いのある声が耳に残っている。

「今日は生コンだからよ!」

結局、最後まで何を言っていたのか全部は分からなかった。

でも、一つだけ分かったことがある。

あのおっちゃんたちは、建物だけではなく、現場の空気までつくっていたのである。

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広告プランナー、フリーランス、店舗経営を経て、事業に失敗。
その後、地方ホテル支配人、配送、飲食、施設警備、交通誘導など、さまざまな現場仕事を経験してきました。

現在は交通誘導警備の現場に立ちながら、仕事の厳しさ、人間模様、収入、失敗談、そして現場で見つけた小さな希望を「警備員ブルース」に記録しています。

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