警備員ブルース|人生の波止場から響くもの

警備員になろうと思ったら、まず読んでください。 現場で出会った人間たち。実体験者が本音で語る警備員のリアル。

警備員物語100

【警備員物語56】酷暑で現場中止——代わりの仕事を断った日

投稿日:

朝、警備会社から連絡が来た。宿直の方から、

「本日の現場は、酷暑のため中止になりました」

とのこと。

工事そのものが中止になったのだ。警備員だけ休むのではない。現場監督も作業員も、今日は外で仕事をするのは危険だと判断したのだろう。

正直、ほっとした。

このところ疲れがひどかった。朝起きても身体が重く、仕事に向かう前から、すでに一日働き終えたような気分だった。それでも現場があれば行くつもりでいた。警備員は、そういうものだ。行きたくない朝にも制服を着て、安全靴を履き、誘導棒を持って家を出る。そういうやり方に慣れてしまってきた。

ところが、同時に代わりの現場を紹介された。

一瞬、迷った。一日休めば、その分だけ給料は減る。日給で働く警備員にとって、現場中止は「思いがけない休日」であると同時に、「思いがけない減収」でもある。

しかし、私は断った。

いまの身体で別の現場へ向かえば、炎天下で何時間も立つことになる。初めての場所なら、日陰やトイレ、休憩場所があるかどうかも分からない。無理をして倒れれば、一日分どころか、その後の仕事まで失う。仮に、行くとしても、電車、パス、徒歩の順路を確認しなければならない。出発まで時間がないのだ。

若い頃なら、少しくらいの疲れは気力で押し切れた。しかし、六十代の身体は正直だ。「まだ働ける」と「今日は休むべきだ」の境目を、自分で見極めなければならない。

現場では、歩行者や車両の安全を守る。それが警備員の仕事だ。だが、自分自身の安全を守る者は、最後には自分しかいない。

休むことに、後ろめたさは若干ある。ただし、自分に対してだ。稼げなかった一日の重さもある。それでも今日は、働かないことを選んだ。

酷暑による中止は、空から届いた休業命令としよう。

警備員は、いつでも現場へ出ればいいわけではない。疲労を認め、危険を避け、次の仕事へ身体をつなぐ。その判断もまた、大切な危機管理である。

今日は誘導棒を置く。

誰かの安全を守るためではなく、自分の安全を守るために。

-警備員物語100
-, , ,

執筆者:

関連記事

no image

警備員マウント合戦|「俺は20年やってる」が自慢になる世界

警備員業界にある「何年やってる」経験値マウント 警備員の世界には、不思議なマウントが存在する。 「俺は5年やってる」 「俺は10年だ」 「20年だぞ」 新人が入ってくると、そんな会話が始まる。 もちろ …

警備員になるなら施設警備と交通誘導どっち?働きやすさ・向いている人を比較

警備員の仕事を探している人が、最初に迷いやすいのが「施設警備と交通誘導、結局どっちが楽なのか?」という問題です。 警備の求人を見ていると、どちらもよく出てきます。未経験者向けの募集も多いため、これから …

【警備員物語11】ラジオの平さん ― 現場は今日も生放送中

警備の仕事にも、少しだけ慣れてきた頃だった。 もうそろそろ新人ではない。 かといってベテランでもない。 ようやく現場の空気が読めるようになり、隊長のクセも分かるようになってきた頃、一人の男性警備員と組 …

【警備員物語36】警備員と公園――そこが我らの休憩所

警備員にとって、公園は思った以上に基調で大切な場所である。 子供たちが遊ぶ場所。犬を散歩させる場所。老人が日向ぼっこをする場所。 もちろん、それが一般的な公園の用途だ。 だが、街中の工事現場で働く警備 …

警備員が辞めず5年以上続く理由を実体験から解説|居心地が良い人の特徴とは

警備員は「辞められないほど居心地が良い」「5年以上続く人が多い」と言われる職種です。とはいえ、実際にどんな理由で長続きしているのか、ネットでは表面的な情報ばかりで本当のところがわからない……そんな人も …

広告プランナー、フリーランス、店舗経営を経て、事業に失敗。
その後、地方ホテル支配人、配送、飲食、施設警備、交通誘導など、さまざまな現場仕事を経験してきました。

現在は交通誘導警備の現場に立ちながら、仕事の厳しさ、人間模様、収入、失敗談、そして現場で見つけた小さな希望を「警備員ブルース」に記録しています。

人生は、思いどおりにいかなくなってからも続きます。

失業した人、仕事に行くのがつらい人、60代からの働き方に迷っている人へ。成功者の上から目線ではなく、いまも現場で働く一人として、警備員という仕事の現実と、人生をもう一度立て直すためのヒントを届けます。

失敗しても、人生はそこで終わらない。
現場仕事を「人生の再起の入口」に変える、再起プランナーとして発信しています。

カテゴリー

カテゴリー

人気記事