
警備員という仕事は、「立っているだけ」だと思われることが多い。
だが、現場に立っている私たちが毎日向き合っているのは、車でも歩行者でもない。
実は、自分の身体である。
水を飲む。
食事をする。
休憩を取る。
そして――出す。
この「出すこと」が、警備員にとっては思っている以上に大きな問題なのだ。
現場へ着いたら、最初に探すもの
初めて入る現場で、私はまず何を見るか。
工事看板でもない。
監督でもない。
資材置き場でもない。
トイレである。
「どこにあるのか。」
「何分かかるのか。」
「公園か。」
「駅か。」
「コンビニか。」
これが分からないまま一日を過ごすのは、不安で仕方がない。
交通誘導警備では、配置を勝手に離れることはできない。
交代してくれる人がいて初めて行ける。
だからこそ、トイレの場所は安全確認と同じくらい大切な情報なのだ。
気の利く隊長は、最初にトイレを調べる
以前、『警備員物語14 トイレの梅さん』を書いた。
大工上がりの梅さんは、現場へ着くと真っ先に周辺を歩く。
そして戻ってきて言う。
「公園のトイレがある。」
「駅なら五分。」
「コンビニはあっち。」
その一言で、新人も応援で来た隊員も安心する。
こういう隊長やベテランは、本当にありがたい。
警備員の苦労を知っているからだ。
トイレの場所を知っているだけで、仕事への集中力がまるで違う。
一番助かるのはコンビニ
現場の近くに公園がある。
駅のトイレが使える。
そんな現場なら幸運だ。
しかし現実には、そんな都合よくはいかない。
そこで、多くの警備員がお世話になるのがコンビニである。
二十四時間近く営業している。
街のあちこちにある。
トイレも設置されている店が多い。
私たち警備員にとって、コンビニは単なる買い物の場所ではない。
現場を支えてくれる存在でもある。
「トイレ使います」と言っていた頃
私が警備員になったばかりの頃は、コンビニへ入ると必ず店員さんへ声をかけていた。
「トイレをお借りします。」
そう言ってから使っていた。
入り口には、
「トイレをご利用の際は店員へお声がけください。」
そんな張り紙が貼ってある店も多かった。
ところが昼時になると、レジには長い列ができている。
一人、二人、三人……。
順番を待っていたら間に合わないこともある。
そんなときは申し訳ないと思いながら、そのままトイレへ向かうこともある。
現場の事情というものがある。
とはいえ、やはり少し後ろめたさは残る。
小さなお菓子を一つ
私は、トイレを借りたときは、なるべく何か買うようにしている。
キャンディ一袋。
チョコレート。
小さなお菓子。
飲み物。
ほんの少しでも買って店を出る。
もちろん毎回とはいかない。
一日に何度も利用する現場もある。
そのたびに買い物をしていたら、お菓子ばかり増えてしまう。
そんな日は、申し訳ない気持ちで店を出る。
「今日は借りるだけになってしまったな。」
そんなことを考えながら現場へ戻る。
コンビニも悩んでいる
最近、ニュースなどでコンビニのトイレをめぐる話題を目にした。
「買い物をしない人には使ってほしくない。」
そんな趣旨の表示や案内が話題になったという。
店からすれば当然の事情もある。
掃除をする。
水道代がかかる。
トイレットペーパーも補充しなければならない。
設備を維持するには費用がかかる。
一方で利用する側にも事情がある。
警備員。
配送ドライバー。
営業職。
タクシー運転手。
外回りの仕事をしている人たちは、街にあるトイレに助けられながら働いている。
どちらが正しい、という簡単な話ではない。
だからこそ難しい。
コンビニは街のインフラでもある
私は時々思う。
コンビニは、単なるお店ではなくなった。
ATMがある。
宅配便を出せる。
公共料金も払える。
災害時には地域の拠点にもなる。
今では、街を支えるインフラの一つと言ってもいい。
そして、その中に「トイレ」も含まれているのではないか。
もちろん、お店の善意に甘えすぎてはいけない。
利用する側にも節度が必要だ。
きれいに使う。
感謝する。
買い物ができるときは買う。
そういう気持ちは忘れたくない。
警備員を代表して「ありがとう」
警備員は現場で何時間も立ち続ける。
水を飲めば、当然トイレにも行きたくなる。
熱中症を防ぐためには、水分を我慢するわけにはいかない。
だから私たちは、街にあるトイレに支えられて仕事をしている。
公園のトイレ。
駅のトイレ。
そしてコンビニのトイレ。
そのどれもが、警備員にとっては仕事を続けるための大切な場所だ。
私は、この場を借りて、小さなお願いと感謝を伝えたい。
コンビニで働く皆さん。
いつもトイレを貸していただき、本当にありがとうございます。
私たちは、立っているだけではありません。
皆さんのお店に助けられながら、炎天下で現場の安全を守っています。
そして私たちもまた、お借りする側として、その善意に甘えすぎないよう心掛けていきたいと思います。
街には、目立たない支え合いがあります。
警備員が工事現場を支え、コンビニが街で働く人たちを支える。
そんな小さなつながりがあるから、今日も一日、街は静かに動いています。
私は明日も、現場へ向かう前に思うでしょう。
「今日も、どこかのコンビニに助けてもらうかもしれない。」
そのときは、心の中でそっと言います。
ありがとう。
