警備員ブルース日誌

【物語02】新人警備研修を受ける

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警備員の仕事は、制服を着てすぐに道路へ立てるほどわけではない。
その前に待っている研修こそが、この仕事の本質を思い知らされる最初の関門だった。

まずは法定研修を受ける。
法律では、新人は20時間以上の研修を受けるように定められているらしい。

制服を着る前に、警備業法で定められた教育を受けなければならないのだ。
警備員としての基本的な知識や法律、安全管理、事故防止、誘導方法などを学び、現場へ出る準備をする。

指定の初日、研修室のドアを開ける。

そこには、私と同じくらいの年齢の男性が数人座っていた。

後に業務がはじまってから、現任研修というものがあるが、
そこで見るように、年齢はいろいろで、男性だけではなく女性も見えてくる。

後に見えてくるが、
若い人もいるが、多くは五十代、六十代。

若い時分に警備の経験がある私は、学生や20代の人たちの事情は何となく察しが付くが、
同年代以上、五十代、六十代を見ると、

「いろいろあって、ここへ来たんだろうな。」

そんな空気が、部屋いっぱいに漂っていた。

隣に座った男性は気さくな人だった。

「どこから来たんですか。」

「前は何の仕事だったんですか。」

そんな何気ない会話が始まる。

履歴書には書き切れない人生を、お互い少しずつ探り合う。

研修期間中は昼食代も支給された。

一日千円。

昼になると外へ出て、好きな店で食べる。

領収書と釣り銭さえ持ってくれば千円以内なら何を食べてもいい。
まだ仕事も始まっていないのに、昼飯だけは少しだけ自由だった。

研修は三日ほどあったが、私は毎日近くの牛丼チェーン店へ行って、
牛丼と何かしらのオプションを加え千円ぎりぎりまでの値段で注文した。

そして研修の内容である。

講師となる社員はほわーとボードの前に立ち、警備員の基本を一つひとつ教えていく。

立ち方。

誘導棒の持ち方。

歩行者への声の掛け方。

車両の止め方。

無線機の使い方。

そして何より、「事故を起こさないこと」。

警備員の仕事は、車を止めることでも、人を誘導することでもない。

事故を起こさせないこと。

そのために道路へ立つ。

それが警備員の一番大切な使命だと教えられた。

一通り要点を教わってから、傍らのモニターで教育ビデオのスイッチが入れられる。

「しばらく見ててください」といいうことで、教材のビデオを見る。

セミナー室から講師の社員は出てゆき業務に戻る。

しばらく、我々研修生は、ビデオをぼうっと見ている。

研修に関してはこんな感じだが、

実技に関しては、

二十歳のころ受けた研修とは、ずいぶん印象が違っていた。

昔二十歳の頃の警備会社では、

講師は警笛を首から下げ、笛をピピーッと鳴らしながら車を誘導していた。

講師も警察OBが多く、口調は厳しかった。

「違う!」

「やり直し!」

怒鳴り声に近い声が飛ぶことも珍しくなかった。

ところが約四十年後の今回は違う。

警笛は使わない。

誘導棒と手の動き、そして穏やかな声掛けが基本になっていた。

講師の話し方も柔らかい。

時代が変われば、警備のやり方も変わる。

力で押さえる時代から、人に安心感を与える時代へ。

そんな変化を感じた。

研修は、法律で定められた時間をかけて行われた。

教室で学び、実技を繰り返し、最後には「これで現場へ出られます」と送り出される。

だが、そのときの私はまだ知らなかった。

本当の研修は、道路に立ったその日から始まるということを。

教科書には載っていない。

誘導棒では教えられない。

人間という、一番難しい相手との研修が。

-警備員ブルース日誌

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広告系プランナー、フリープランナーを経て店舗経営に挑戦するも失敗。
その後、地方ホテル支配人、配送ドライバー、飲食、施設警備、交通誘導など、さまざまな現場仕事を経験。
現在は警備の現場に立ちながら、警備員や現場仕事を人生の再起の入口として発信しています。
成功談だけではなく、落ちた側・働く側のリアルを知る者として、
再起を応援する「再起プランナー」として発信中。

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