警備員ブルース日誌

【物語01】警備員になったら人生終わり?

投稿日:

「警備員になったら人生終わり。」

そんな言葉を、ネットで何度見ただろう。

正直に言えば、私もそう思っていた。

いや、思いたくはなかった。

だが、制服を受け取った日、「ああ、とうとうここまで来たか」と胸のどこかでつぶやいた。

実は、警備の仕事はこれが初めてではない。

三度目だった。

一度目は二十歳のころ。

大学を変わり、生活費を稼ぐためだった。

若かったから、警備は人生の通過点だった。

金を稼ぎ、また前へ進めばいい。それくらいにしか考えていなかった。

二度目は五十歳を過ぎてから。

マルチ商法にのめり込み、大金を失った。

財布の中だけでなく、自信まで空っぽになった。

その穴を埋めるように、また警備の制服を着た。

だが、それも長くは続かなかった。

そして三度目。

山形の小さなホテルで支配人を務めたあとだった。

新しい人生を探して、宅配ドライバーになった。

テレアポもやった。

土木会社では現場代理人見習いにもなった。

ラーメン屋でも働いた。

仕事を変えるたびに、「今度こそ」と思った。

だが、どれも長くは続かなかった。

そして最後にたどり着いたのが、工事現場の警備だった。

「あーあ。とうとう来たか。」

初日の朝、そんな言葉が自然に口をついて出た。

まさか、こんなに長く続くとは思ってもいなかった。

数か月。

長くても一年。

そのくらいで別の仕事へ移るつもりだった。

ところが気がつけば、季節が何度も巡っていた。

私は今日も道路に立っている。

最初は、警備員になったら人生は終わりだと思っていた。

ところが、現場には私以上に波乱万丈な人生を歩いてきた人たちが、次から次へと現れた。

元板前。

元社長。

元営業マン。

怒鳴る男。

妙に威張る女。

寡黙な老人。

みんな、それぞれの人生を背負って、この現場に立っている。

工事現場だと思っていた場所は、いつしか私には違って見えるようになった。

ここは人生の終着駅ではない。

人生の波止場だ。

傷ついた船が流れ着き、またどこかへ出航する者もいれば、そのまま静かに係留される者もいる。

そして私も、その一隻だった。

この物語は、道路工事の話ではない。

警備員という制服を着て出会った、人間たちの物語である。

-警備員ブルース日誌

執筆者:

関連記事

警備員の現場には“得意技”がある|役割配置で光る「七人の警備員」、それぞれの持ち味

7人と言いながら一人足りないぞーー! 警備員の仕事というと、ただ立って誘導しているだけに見えるかもしれない。だが、実際の現場はそんなに単純ではない。 工事現場でもイベントでも、うまく回っている現場には …

no image

警備員が朝、仕事に行きたくない朝は、どうすればいい。60代の本音

「もう行きたくない」 朝、目が覚めた。 カーテンの向こうは明るい。 なのに体は動かない。 「ああ、辛いなー」 その一言しか出てこない。 警備員になって何年か経つが、この気持ちは何度も味わってきた。 警 …

警備員の持ち物リスト|会社支給品以外に本当に必要なものは?現場目線で解説

警備員の仕事を始めると、制服や誘導棒、安全靴など、基本的な装備は会社から支給されることが多いです。しかし、実際に現場に出てみると、それだけでは足りないと感じる場面がかなりあります。 暑さ寒さへの対策、 …

警備員の休憩時間の過ごし方|現場で疲れをためない工夫と求人の見直し方

警備員の仕事は、立っている時間が長いわりに、「休める時にどう休むか」がとても大事な仕事でもあります。外から見ると、ただ立っているだけに見えるかもしれません。だが実際には、気を張る時間が長く、車や人の流 …

一時間で工事終了、まさかの早上がり|警備員の仕事でたまにある「うれしい誤算」

警備員の仕事をしていると、長い一日を覚悟して現場に立つことが多い。朝は早いし、天気にも左右される。夏は暑く、冬は寒い。立ちっぱなしで、時間がなかなか進まない日もある。 ところが、そんな警備員の仕事の中 …

広告系プランナー、フリープランナーを経て店舗経営に挑戦するも失敗。
その後、地方ホテル支配人、配送ドライバー、飲食、施設警備、交通誘導など、さまざまな現場仕事を経験。
現在は警備の現場に立ちながら、警備員や現場仕事を人生の再起の入口として発信しています。
成功談だけではなく、落ちた側・働く側のリアルを知る者として、
再起を応援する「再起プランナー」として発信中。

カテゴリー

カテゴリー

人気記事