
「今日は帰ったら一本書こう。」
そう思って家を出る朝がありながら、
帰ってくるとばたんきゅー・・・
電車を乗り継ぎ、遠い建築現場へ向かう。
現場に着けば、一日中立ち続ける。夏は照り返し、冬は冷たい風。重労働ではないと言われる。だが、身体の奥底には、鉛のような疲れが少しずつ沈んでいく。
帰りの電車では、窓の景色も見えない。
眠っているのか、気を失っているのか、自分でもわからない。
家に着く。
飯を食う。
風呂に入る。
そして、気がつくと朝になっている。
休みの日こそ書こうと思う。
コーヒーを飲み、パソコンを開くつもりだった。
ところが、布団に横になる。
「少しだけ」のつもりが、目を覚ますと夕方だ。
また今日も書けなかった。
悔しい。
情けない。
「俺は何をやっているんだ。」
そんな言葉が胸の中をぐるぐる回る。
だけど最近、ひとつ気づいた。
書けないこともまた、警備員ブルースなのではないか、と。
警備員という仕事は、時間だけではなく、書こうとする気力まで持っていく。
遠い現場への通勤。
立ち続ける一日。
誰にも気づかれない疲労。
休日は眠るだけ。
それでも生活のために、また制服を着る。
この繰り返しの中で、夢は少しずつ遠ざかっていく。
ブログを書いて人生を変えたい。
その思いだけは消えていない。
だから苦しい。
警備員を辞めたいのではない。
警備員だけで人生が終わるのが怖いのだ。
『警備員ブルース』は、格好いい話を書くブログではない。
人生の波止場で立ち止まった者が、それでも前を向こうとする記録である。
今日も一本の記事は書けなかった。
その代わり、この文章を書いた。
「書けなかった」という事実を書いた。
それでも一歩だ。どうだコノヤロ!
ブルースという音楽は、勝者の歌ではない。
負けそうになりながら、それでも歌う人間の歌だ。
だから今日も、胸の中で小さく歌う。
遠い現場へ 始発が走る
眠気を積んで 電車は揺れる
書きたい言葉は 胸にあるのに
疲れが先に ペンを眠らせるそれでも俺は まだ諦めない
制服のポケットに 明日の一行をしまって歩く
ブルースは、元気な日に歌うものじゃない。
くたびれた日にしか、生まれない歌なのだから。