警備員ブルース|人生の波止場から響くもの

警備員になろうと思ったら、まず読んでください。 現場で出会った人間たち。実体験者が本音で語る警備員のリアル。

警備員物語100

【警備員物語13】警備員の熱中症は本人が気づかない──私を救ったのは仲間の「異変を見抜く目」だった

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「熱中症には気をつけよう。」
夏、警備の現場でよく聞かれる言葉である。が、馬鹿らしいコトバである。

正直、夏場の土木や建築現場の警備をしていると、命がけになる。というといいすぎか、と言われそうだが、本当なのだ。

炎天下38度、灼熱の太陽。夏は風が吹かない日が多い。たまりこむ地熱。

「交通誘導なんて、ただ立っているだけでしょう。」

そう言われることがあるし、ネットでもそんな言葉がよく出る。

確かに重い荷物を持つわけでもないし、スコップで作業員のように穴を掘るわけでもない。

しかし、真夏の炎天下で一日中ヘルメットをかぶり、反射ベストを着て、工事車両や歩行者へ神経を張り続け、誘導棒を振る仕事は、想像以上に体力を奪う。

私は、ある日。その現実を厳しさを身をもって知った。

熱中症で倒れかけた日があるからだ。

自分では気づかなかった異変

その日は朝から猛烈な暑さだった。

自宅から30分くらいと割合近い現場だったので、自転車で現場に向かった。朝一番から灼熱の日の元、なんか不思議と自転車を濃くペダル、ハンドルがフラァァァァっと時に揺れた。

ついた建築現場には日陰が少ない。昼になると太陽がてっぺんに来るので日陰はどんどん削がれていく。

アスファルトの照り返しが足元から突き上げる。

ヘルメットの中は蒸し風呂のようになり、制服は汗だくで重くなる。

仕事は続く。

車両が来れば誘導する。

歩行者が来れば安全を確保する。

「お気をつけてお通りください」

お気をつけては自分だよ!

私はいつものように仕事をしていた。

いや、しているつもりだった。

喉は渇いていた。水分となるものは携帯していなかった。

身体も重くなってくる。

少しフラフラする気もした。

でも私は、

「今日は暑いからな。」

その程度にしか思っていなかった。

警備をはじめて2年目の夏だった。

後から周りの話を聞くと、その頃の私は現場に着いた時から目つきがおかしく、歩き方もどこかふらついていたらしい。

しかし本人だけは、まったく気づいていなかった。

熱中症の恐ろしいところは、ここにある。

本人が気づかない。つまり判断力まで奪われるのだ。

「休んでください」

一緒に現場へ入っていた隊員が、私を見て声をかけた。

「オチボさん、休んでください。」

私は、

「いや、大丈夫。」

と答えた。

本当にそう思っていた。

だが、その隊員は引かなかった。

「目つきがおかしいです。」

「歩き方も変です。」

「休んでください。」

私は反射的に「なんだと~」と答えた。

その言葉で、私はようやく自分の様子がおかしいことを知った。

「なんだと~」の言葉が舌足らずで回っていないことが自覚できた。

なんらと~

最初本人は自覚できなかった。

本人より先に、仲間の警備員が気づいてくれたのである。

警備員は車や歩行者の危険を察知する仕事だ。

だが、その日は仲間が私の危険を察知してくれた。

ぶつかっていた隊長の、本当の姿

当時の隊長は、ここでは「キャプテン隊長」と呼ぶ。

実は私は、この隊長と最初はよくぶつかっていた。

警備のやり方、指示の出し方が、名前の通り野球部のキャプテンみたいな厳しさがあった。

指示の出し方。オラオラオラ~~、な感じ。

私は納得できないことがあると、つい口にしてしまう性格だ。

だから、お互い気まずくなることもあった。

ところが、その日は違った。

私の様子を見るなり、キャプテン隊長はすぐ休ませる判断をした。

責めることもなかった。

怒ることもなかった。

ただ静かに、

「休んでいて。」「無理しないで」「いいから気にしないで」

そう言ってくれた。

仕事では意見がぶつかっても、人の命がかかった場面では別だった。

その姿を見て、この人は本当に現場を預かる隊長なんだと思った。

支社長が車で迎えに来た

現場から私の所属する支社へ連絡が入った。

しばらくすると、支社長が車で迎えに来てくれた。

冷房の効いた車内へ入れられ休まされた、身体中を包んでいた熱気が少しずつ引いていく。

薬局で売っている補給水のOS-1を渡され、ゆっくり飲む。

その頃になってようやく、

「オレ、危なかったのかもしれない。」

と思えるようになった。

現場に立っている間は、自分では本当に分からなかった。

もしあのまま仕事を続けていたら。

もし誰も気づいてくれなかったら。

……ぶっ倒れていた、かも。

そう考えると、今でも少しぞっとする。

熱中症は本人が一番気づきにくい

この経験から学んだことがある。

熱中症は、自分だけで判断しようとしてはいけない。

もちろん、水分補給や塩分補給は大切だ。

睡眠も大切。

朝食も大切。

しかし、それ以上に大切なのは、

仲間がお互いを見ていること。

返事が遅い。

歩き方がおかしい。

目がうつろ。

会話がかみ合わない。

そんな小さな変化に気づくことが、命を救う。

これは警備だけではない。

スポーツ、現場作業員、遊び、夏の暑い日に活動すること、みな共通する。

本人は、

「まだ大丈夫。」

と思っていることが多い。

だから周囲が声をかける。

「休んでください。」

その一言が命綱になることがある。

警備員は一人では仕事ができない

交通誘導警備は、一人で立っている仕事に見える。

しかし、実際は違う。

隊員がいる。

隊長がいる。

監督がいる。

支社がある。

誰かが異変に気づき、誰かが判断し、誰かが動く。

そうやって現場は回っている。

私は、あの日、一人では助からなかった。

もし、私がぶっ倒れていたら、現場の仕事は止まってしまっていた。

異変を見つけてくれた隊員。

すぐ対応してくれたキャプテン隊長。

支社へ連絡し、迎えに来てくれた支社長。

みんなの行動がつながって、私は無事に帰ることができた。

警備員という仕事は、時には人間関係で悩むこともある。

隊長とぶつかることもある。

会社に不満を持つこともある。

それでも、本当に危険な場面では、人は人を助ける。

助けなければ、警備、工事、会社がストップ。

あの日、そのことを私は身をもって知った。

だから今、夏の現場へ向かうたびに思う。

熱中症を甘く見てはいけない。

そしてもう一つ。

仲間の「いつもと違う」を見逃してはいけない。

警備員は現場の安全を守る仕事だ。

だが本当は、それだけではない。

隣に立っている仲間の命を守ることも、警備員の大切な仕事なのだと思う。

あのまま現場に立ち続けていたらどうなっていたのか。

そう思うと、少し怖くなります。

警備員は、現場だけでなく、仲間の命も警備する仕事なのだ。

もしこの記事を読んでいるあなたが現役警備員なら、今年の夏はぜひ仲間の顔も見てください。

そして、これから警備員になろうと考えている方は、「無理をしないこと」と同じくらい、「仲間の声に耳を傾けること」を覚えておいてください。

真夏の現場で人の命を守るのは、水分や塩分だけではありません。

「何かいつもと違う。」

その小さな違和感に気づく、人の目です。

-警備員物語100

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広告プランナー、フリーランス、店舗経営を経て、事業に失敗。
その後、地方ホテル支配人、配送、飲食、施設警備、交通誘導など、さまざまな現場仕事を経験してきました。

現在は交通誘導警備の現場に立ちながら、仕事の厳しさ、人間模様、収入、失敗談、そして現場で見つけた小さな希望を「警備員ブルース」に記録しています。

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